懐かしのキネマ その80 【アパートの鍵貸します】

ビリー・ワイルダー(Billy Wilder)監督・脚本による都会派コメディの代表作が【The Apartment】です。主演のジャック・レモン(Jack Lemmon)は、アメリカ映画界最高の喜劇俳優といわれています。共演したのは、シャーリー・マクレーン(Shirley MacLaine)です。

1959年12月、あるニューヨークの大きな保険会社の19階の大部屋でC.C.バクスター(Bud” Baxter)、通称バドは勤めています。勤続3年と10ヶ月、礼儀正しく、数字に強く、だが、押しには弱い彼の週給は94ドル70セントでした。家賃月額85ドルの独身向けアパートに住む彼には一つの秘密がありました。それは、不倫の密会をする情事の場所として自分の部屋を会社の上司4人に又貸ししていたのです。バドは、出世の足掛かりを求めて部屋を貸し、そのため毎夜遅く帰る生活をしています。ある日、シェルドレイク(Sheldrake)人事部長に呼び出され、彼にも部屋を貸すことになります。課長補佐に昇進したバドは会社のエレベーター係のフラン(Fran Kubelik)をデートに誘うのですが、実は彼女はシェルドレイクの愛人でした。、バドはフランとのデートの約束をすっぽかしてしまいます。

会社でのクリスマス・イブのパーティで、フランはシェルドレイクの秘書・オルセン(Miss Olsen)から彼の女性遍歴を聞いて落ち込みます。また、バドはふとしたことからフランがシェルドレイクの愛人であることに気付き、ショックを受けます。シェルドレイクに部屋を貸したバドはバーで閉店まで時間をつぶすのです。シェルドレイクと別れ話になったフランは、彼が帰ったあと睡眠薬自殺を図ります。帰宅したバドは倒れているフランを見つけると、隣の部屋のドレイファス医師(Dr. Dreyfuss) を呼んで介抱します。翌日、フランの看病のため、会社を休んだバドですが、フランを迎えに来た義兄のカール(Karl) にバドがフランの自殺未遂の原因だと誤解されて殴られる始末です。

Bud and Fran

翌日、出社したバドは、シェルドレイクにフランを引き取ると持ち掛けようとします。シェルドレイクは解雇したオルセンに女性関係をばらされて離婚することになったと打ち明け、バドを部長補佐に昇進させるのです。大晦日、スポーツクラブに泊まっていたシェルドレイクはフランと過ごすため、バドにアパートの鍵を要求しますが、バドは要求をはねつけて会社を退職し、アパートから引っ越す準備を始めます。

レストランでの新年パーティでフランは、シェルドレイクからバドが会社を辞めたと聞き、彼の気持ちにようやく気付くと、彼のアパートに急ぎます。一人でシャンパンを開けていたバドのもとにフランがやってきます。そこで、バドはフランに愛を告白するのです。フランはそれに答えず、バドにトランプを配り、カードゲームに誘うという結末です。

懐かしのキネマ その79 【北北西に進路を取れ】

原題は【North by Northwest】という1959年に製作されたスパイスリラー作品です。世界的名監督のアルフレッド・ヒッチコック(Alfred Hitchcock)が監督しています。

1958年、ニューヨーク市のホテルのバーにいる2人の凶悪犯が、探しているジョージ・カプラン(George Kaplan)をポケットベルで呼ばれるのを聞きます。そこに居合わせた広告会社の重役ロジャー・ソーンヒル(Roger Thornhill)は、カプランと間違えられ誘拐されて、ロングアイランド(Longisland)のタウンゼント(Lester Townsend)という不動産屋の邸宅に連れて行かれ、スパイのフィリップ・ヴァンダム(Phillip Vandamm)に尋問されます。ヴァンダムはソーンヒルの抗議を無視し、さらに酔っぱらいの運転事故に見せかけて殺そうとします。ソーンヒルは、母親と警察に事情を話しますが、納得させることができません。警察は彼をタウンゼントの家に連れ戻し、そこにいた女性は彼が彼女のディナーパーティーで酔って現れたと言います。

North by Northwest

ソーンヒルは釈放され、拉致されたホテルに戻ってキャプランの正体を確かめようとします。しかしホテルの客室にカプランが宿泊している形跡はあっても、カプラン当人を見た者は誰もいません。そのうち邸宅にいた手下たちが追ってきたことを知ってソーンヒルはホテルから逃走し、タウンゼントが国連で演説する予定と聞いたことを思い出します。そして今度はタウンゼントを追って国連本部へ向かいます。ところが国連のロビーで会ったタウンゼントは、邸宅にいた男とは別の人物です。2人が噛み合わない会話をしていると、そのタウンゼントの背中に手下のひとりが投げたナイフが突き刺さります。ソーンヒルは、殺人容疑者として大きく報道されてしまうのです。

架空の人物とも知らず、なおもカプランを追い求めるソーンヒルは、シカゴに向かう特急寝台列車「20世紀特急」(20th Century Limited to Chicago)に乗ります。その車内でイヴ・ケンドール(Eve Kendall)という女性と親しくなります。彼女はソーンヒルがお尋ね者であることを承知していて、彼を自室に招き入れてかくまうのです。ところが同じ列車にヴァンダム一味も乗っていて、実はイヴは彼らと通じていたのです。シカゴに着くと、イヴはカプランと連絡をとったと言って、ソーンヒルを郊外の広大な平原に向かわせます。しかし、その平原でいつまで待ってもカプランは現れず、そのかわり農薬を散布していたはずの軽飛行機が襲いかかってきます。平原を縦横に逃げるソーンヒルを追い回すうち、軽飛行機は通りかかったタンクローリーに衝突して炎上してしまいます。

Mt. Rushmore

ともかく、この映画は、スパイスリラーですから、いろいろとハラハラする場面が満載です。たとえば、ラシュモア山(Mount Rushmore)の頂上への逃走劇です。指先で山にぶら下がるイヴをソーンヒルは手を伸ばして彼女を引き上げます。ソーンヒルとケンドールが山を下るとき、彼らはパークレンジャーによって打たれる凶悪犯を眺めます。その後の経緯は見てのお楽しみですが、ソーンヒルは新しくソーンヒル夫人となったイヴを電車の上段に引き込みます。その後、列車はトンネルに入るという結末です。

懐かしのキネマ その77 【エビータ】

ミュージカル『エビータ』(Evita)をもとにした1996年のアメリカ映画です。アルゼンチン(Argentine)のファーストレディ(First Lady)であったエバ・ペロン(María Eva de Peron)を描いています。フアン・ペロン(Juan Domingo Peron)大統領と結婚し、後に政治にも介入するようになります。アルゼンチン国内では人気が高く、民衆は親しみをこめてエビータ(Evita)と呼んでいました。Evitaを演じたのはマドンナ(Madonna)です。

Eva Peron

ペロンは軍人で、1943年6月のクーデター以降、労働組合の支持を得て徐々に勢力を増していきます。1944年1月のサンフアン大地震(San Juan Earthquake)の救済コンサートでエバとペロンは出会い、愛人として、かつ共に権力を目指すようになります。エバは上流階級の社交界にも顔を出すようになっていきます。しかし、その出自から軍部や上流階級どちらからもひんしゅくを買うようになります。

1945年のクーデター (Coup detat) によりペロンは一時拘束されますが、エバはラジオ番組や演説を通じて働きかけ、ペロニスト(Peronists) の民衆もペロンの釈放を求めて続々と首都ブエノスアイレス(Buenos Aires) に集結します。解放されたペロンはエバと正式に結婚。「労働者の味方」を演出してさらに人気を上げ、エバはついに26歳にしてアルゼンチンのファーストレディとなります。ペロンが大統領に就任した際、大統領官邸カサ・ロサダ (La Casa Rosada)のバルコニーで、エバは「アルゼンチンよ泣かないで」Don’t cry for me Argentina)を歌います。

“Don’t Cry for Me Argentina”

エバは財団基金の名のもと集めた寄付で、ディオール ((Christian Dior) の服や毛皮、宝石などで華やかに着飾って、「レインボー・ ツアー」(Rainbow Tour)と銘打ってヨーロッパ各国を歴訪します。さらに婦人参政権運動をすすめ、貧しい人々を助けるエヴァ・ペロン財団(Eva & Peron Foundation) を設立するなど、精力的に活動を続けます。しかし、特権階級が独占していた富を吸い上げ、奔放な施策で貧困層の不満のガス抜きをしますが、問題の根本的な解決には至らず、アルゼンチンの混乱は続きます。鉄の意志のような振る舞いで、夢を実現してきたエバも、病に襲われ33歳で亡くなります。葬儀は国民葬で執り行われました。人生を激しく生きた稀有な女性といわれています。

懐かしのキネマ その76 【ブレイブハート】

原題は【Braveheart】というアメリカ映画です。スコットランド(Scotland) の独立のために戦った実在の人物ウィリアム・ウォレス(William Wallace) の生涯を描いた歴史映画です。スコットランドは現在はグレートブリテン及び北アイルランド連合王国(United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland:UK)に属しますが、1707年まではスコットランド王国として存続しました。UKの通称はイギリスとか英国と呼ばれます。

West Highland

13世紀末、イングランド王(England)エドワード1世(EdwardI) の過酷なスコットランド支配に対して、ウィリアム・ウォレスは、スコットランド民衆の国民感情を高めて抵抗運動を行います。家族を殺害されるも、難を逃れたウォレスは、成人して彼は故郷に戻り、そこで幼なじみのミューロン(Murron)と恋に落ち、結婚します。しかし彼女はイングランド兵の手によって殺害されます。ウォレスは復讐を決意し、圧政に苦しむスコットランドの民衆の支持によって、抵抗運動は高まっていきます。

William Wallace

1297年のスターリング・ブリッジの戦い(Battle of Stirling Bridge)でウォレスらは、イングランド軍に勝利をおさめます。ウォレス率いる反乱軍は連勝を重ね、逆にイングランド領のヨーク(York) を占領します。エドワード1世は講和しようと息子の妻イザベル( Isabelle) をウォレスの元に送ります。彼女はウォレスに魅了され、イングランドへの侵攻を止めるように進言します。しかし、ウォレスは独立の好機ととらえ、スコットランドの王位継承者と目されるロバート・ザ・ブルース(Robert the Bruce) をはじめとする貴族層にも蜂起を促します。ですが、権益を保持したい貴族たちは土壇場でウォレスを裏切り、1298年のフォルカークの戦い(Battle of Falkirk) でイングランド軍に大敗を喫します

その後も辛くも生き延びたウォレスは行方を眩まし、各地でゲリラ戦を展開し、エドワードの支配への抵抗運動を継続しますが、1305年にイングランド軍に捕らえられ、大逆罪で有罪となります。ロンドンで行われた公開処刑では慈悲を乞うことを拒否し、【祖国の自由を】と叫びながらウォレスは息絶えます。ブルースに率いられたスコットランドの勇士たちは果敢に戦い、バノックバーンでの戦い(Battle of Bannockburn)でイングランド軍を破り自由を勝ちとるのです。

懐かしのキネマ その75 【レフト・ビハインド】

原題は「Left Behind」。新訳聖書「ペテロの手紙」(First Epistle of Peter)に「万物の終わりが近づきました。ですから、祈りのために心を整え身を慎みなさい」という聖句があります。「Left Behind」とは「取り残される者」という意味です。【レフト・ビハインド】という映画は、万物の終わりが近づいたという「終末」にまつわる預言が描かれた作品です。

映画は、何の前触れもなく、世界各国で数百万もの人々が消失するという異常事態が発生することで幕が上がります。各種通信網やエネルギー網などのシステムはダウンします。さらに消失を逃れた人々は不安に駆られて混乱し、一部は暴徒化してしまいます。

パイロットのレイフォード(Rayford Steele) が操縦するジャンボジェット機内でも同様の消失現象が起きます。副機長のクリス・スミス(Chris Smith)、客室乗務員のキミー(Kimmy)、そして搭乗していた子どもたち全員が、着ていた衣服を残したまま姿を消します。消失しなかった乗客たちはパニックになって、なぜこんな現象が起きたのかと騒ぎ立てます。

レイフォードは自分が知る情報はすべて乗客に伝えると何度も言います。彼は地上と無線や携帯電話で連絡を取ろうとしますが、つながりません。ようやく連絡がついたときには、世界中で消失現象が起き、そのためにパニックが起きていることを知らされます。その後すぐに、パイロットが消失したジェット機がレイフォードの飛行機の飛行経路に近づいてきます。レイフォードはかろうじて上空での正面衝突を避けますが、エンジンにダメージを受け、燃料の流失が始まります。レイフォードはニューヨークへ引き返す決断を下します。

地上では、レイフォードの娘、クローイ(Chloe Steele)が父親の救難要請を携帯電話で聞き、飛行機が墜落してしまったと思ってしまいます。その後、クローイは親交のあるブルース・バーンズ牧師(Rev Bruce Barnes)に会うために、ニュー・ホープ教会(New Hope Church) へと向かいます。バーンズ牧師は神が自らを信じる者を天国へ導き、残された者たちは終末の日を迎えることになると主張する牧師でした。バーンズ牧師は「自分が説教する内容を本気で信じていなかったために、自分は取り残されてしまった。」とクローイに告白します。

その頃、副機長と客室乗務員が残した所持品を調べていたレイフォードもバーンズ牧師と同じ結論に至ります。レイフォードは、客室乗務員のハティー (Hattie Durham) に妻アイリーン(Irene Steele)が熱心なキリスト教の信者になってしまったことを打ち明けます。レイフォードは、ハティーと情を交わしていたのです。その話を聞いたハティーは、レイフォードが結婚している事実すら知らなかったために激怒します。しかし、やがて落ち着きを取り戻したハティーは、無事着陸できるまで乗客をなだめて落ち着かせようと努力します。

クローイは自殺しようとします。そこに飛行機の乗り合わせていた記者のバック(Buck William)から電話がはいります。レイフォードは、クローイに、すべてのニューヨーク付近の空港は閉ざされ,道路も車で一杯であること、燃料が尽き始めていることを伝えます。クローイは捨てられているトラックを使い、建設中の道路の資材を取り除き、一時しのぎの滑走路にしようとします。コンパスのアプリを使い、着陸地を指示します。レイフォードはなんとか道路に着陸し、乗客を救うのです。辺り一面火の海が広がります。バックは「これはまさに世界の終わりだ、、」とつぶやくのですが、クローイは「これが世界の始まりなのだ、、」と答えるのです。

懐かしのキネマ その74 【グリーンブック】

人種差別が色濃く残る1960年代のアメリカ南部を舞台に、黒人ジャズピアニストとイタリア系白人運転手の2人が旅を続けるなかで友情を深めていく姿を、実話をもとに描いた作品が【Green Book】です。「グリーンブック」とは、黒人用旅行ガイド本の代名詞です。

Tony Lip & Don Shirley

舞台は1962年のニューヨーク(New York)です。人気の高級ナイトクラブで用心棒をしているトニー(Tony Lip)は、クラブが改装のため閉鎖になりしばらくの間、無職になってしまいます。トニーは、南部でコンサートツアーを計画する黒人ジャズピアニストのドクター・ドン・シャーリー(Dr. Don Shirley) のボディガード兼運転手として雇われることになります。当時は人種差別が根強く残り、「黒人専用ホテル」があったり、白人と同じレストランで食事をすることさえ制限される時代です。

粗野で無教養ですが口が達者で、何かと周囲から頼りにされているのがトニー。教養はあるものの気難しいドンというように、2人の出自も性格は反対です。黒人差別が色濃い南部へ、あえてツアーにでかけようとするドンと、「グリーンブック」 を頼りに、トニーはその旅に同行することになります。この2人がまるで違う価値観のもと衝突しながらも次第に友情を築いていきます。

アラバマ州(Alabama)バーミンガム(Birmingham) での最後の演奏会の夜、ドンは、白人専用のカントリークラブ内の食堂へ入ることを拒否されます。カントリークラブはドンに演奏を依頼していたのです。トニーは支配人と喧嘩となり、ドンは食事を拒否されたので、演奏はしないと宣言します。トニーとドンはカントリークラブを出て、黒人のブルースクラブに行って食事をします。そこでドンはピアノを演奏し、ショパンのエチュードホ短調 (Etude in E minor)を弾きます。2人は、クリスマスイブのためにニューヨークへ戻ろうとします。トニーは夕食を共にしようとドンを招待しますが、ドンは招待を断り自分の家に帰っていきます。1人で家で坐るドンですが、トニーの家へ行こうとします。そしてトニーの家族から大歓迎を受けるのです。

懐かしのキネマ その73 【アメリカン・スナイパー】

クリントイーストウッド (Clint Eastwood)が監督した1人の苦悩する狙撃手(sniper)の自叙伝を実写化した作品です。原題も【American Sniper】です。

クリス・カイル (Chris Kyle) はテキサス州(Texas) に生まれます。父親から鹿狩の技術を仕込まれながら育ちます。ロデオ(rodeo)に明け暮れていたカイルは、アメリカ大使館爆破 (U.S. Embassy Bombings)事件をきっかけに海軍へ志願します。30歳という年齢ながら厳しい訓練を突破して特殊部隊シールズ(U.S. Navy SEALs) に配属され、私生活でも恋人タヤ(Taya) と共に幸せな生活を送るカイルです。

Chris Kyle

間もなくアメリカ同時多発テロ事件を契機に戦争が始まり、カイルもタヤとの結婚式の場で戦地への派遣命令を貰います。イラク戦争(Iraq War) で狙撃兵として類まれな才能を開花させたカイルは、多くの戦果から軍内で「伝説的人物(Legend)」と称賛されると共に、敵からは「悪魔」と呼ばれ懸賞金をかけられていました。

テロ組織アルカイダ(al-Qaeda)を率いるザルカーウィー(Abu Musab al-Zarqawi) を捜索する作戦へと参加したカイルは1,000m級の狙撃を得意とする元オリンピック射撃選手の敵スナイパー「ムスタファ」(Mustafa) と遭遇し、以後何度も死闘を繰り広げるのです。繰り返される凄惨な戦いのなかで親友のビグルス(Ryan Biggles)は戦傷により視力を失い、戦争に疑問を感じ始めたマーク・リー(Marc Lee) は戦死し、強い兄にあこがれて海兵隊に入隊した弟はイラク派兵で心に深い傷を負って除隊します。

同僚や弟が戦場で傷付き、倒れゆく様を目の当たりにし、徐々にカイルの心は心的外傷後ストレス障害(PTSD) に蝕ばまれていきます。戦地から帰国するたびに変わっていく夫の姿に妻のタヤは苦しみます。人間らしさを取り戻してほしいと嘆願するタヤの願いもむなしく、戦地から帰国するたびにカイルと家族との溝は広がっていきます。

4度目の派遣でイラクに戻ったカイルたちは敵の制圧地帯に展開し、防護壁の工兵を射殺したムスタファの姿をついに捉えます。1,920mの距離からビグルスへの思いを込めて放った1発の銃弾はムスタファを貫ぬき、敵陣の包囲網を辛くも突破します。除隊して帰国したカイルですが、数々の戦果を挙げながらも心に傷を負っています。戦地の記憶に苛まれて一般社会に馴染めない日々を送ります。やがて医師の勧めで始めた傷痍軍人(wounded veterans)たちとの交流を続けて少しずつ人間の心を取り戻していくのですが、、、、

懐かしのキネマ その72 【ダイ・ハード】

英語の題名は【Die Hard】。「最も不運な場所に居合わせる、最も不運で簡単には死なない男」が、ニューヨーク市警(New York City Police Department)のジョン・マクレーン刑事(John McClane)です。「世界一ついてない男」と揶揄されていますが、マクレーンは気にしません。マクレーンは、クリスマスイブに別居中の妻ホリー(Holly) に会うためロサンゼルス (Los Angeles) にやって来ます。そしてホリーが勤めている日系企業のナカトミ商事(Nakatomi Corporation)で、彼女と再会しますが、2人は口論を交わしてしまいます。

その日に企画されたクリスマス・パーティに2人は、手配したリムジンの陽気な運転手アーガイル(Argyle)の運転で、会場のナカトミ・プラザビルに向かいます。突如、ドイツ人のハンス・グルーバー(Hans Gruber)とその部下たちが、重武装で乱入してきます。パーティーの出席者全員が彼らの人質になります。マクレーンは脱出し難を逃れます。

John McClane

強盗らの目的は、厳重なセキュリティーにより保管されている6億4千万ドルの「無記名債券」(bearer bonds)でした。マクレーンはグルーバーらが占拠するフロアから脱出し、火災報知機を作動させますが、グルーバー一味が報知器の誤作動だと通報したことによって、いったん出動した消防隊は引き返してしまいます。次にマクレーンは一味の一人から奪った無線でロサンゼルス市警察に通報します。しかし、ロス市警はマクレーンが有線ではなくわざわざ無線を使って通報してきたこと、報知機の誤作動を起こしたナカトミ・プラザだったことから、イタズラだと疑って取りあいません。

しかし、その最中に銃撃戦が始まったことで、直近のパトロール警官に見回りを指令します。そこでマクレーンは、確認のためにナカトミ・プラザを訪れたアル・パウエル(Al Powell)巡査部長のパトカーへ、倒した一味の死体を落として異常事態を知らせるのです。一味からの銃撃も受けたパウエルは市警本部に応援を要請します。

Bruce Willis

マクレーンは、こうして手強いテロリストにたった1人で立ち向かうのです。ジョークを用いて敵を倒していく姿は、無鉄砲な一面もあります。偽造された身分証明書を見抜いたり、煙草の銘柄から出身国を推測するなどと、刑事としての洞察力が優れています。屋上やコンピュータ室での銃撃戦でゲリラ戦を展開したり、即席爆弾を作り戦術面や工作面でも高い技術を持つ刑事として描かれます。ただのアクション映画ではありません。

懐かしのキネマ その71 【パイレーツ・オブ・カリビアン】

【Pirates of the Caribbean】は、「ジュラシック・パーク」とか「インディ・ジョーンズ」と同様に、ストーリーが奇想天外で文句なく楽しめる娯楽映画です。海賊の伝説や民話に基づいて製作されたこうした映画は、私たちには必要な栄養剤というか睡眠剤のようなものです。あれこれ難しいことを考えず楽しんで観ましょう。

物語はジャック・スパロウ(Jack Sparrow)を中心に展開します。ジャックは、七つの海の伝説の海賊であり、カリブ海 (Caribbean Sea) の不敵なスターです。道徳観とか正義感があるのかわからないキャプテンで、自己宣伝と利己主義の達人でもあるジャックはこうした性格のために何度も勝ち目のない戦いを強いられます。ジャックの初恋の相手は海であり、2番目は最愛の船<ブラックパール号(Blak Pearl) でした。

ジャックはハリケーンの最中の海賊船で誕生したという設定です。10代の頃から冒険を求めて密航したりして、やがて「キャプテン・ジャック・スパロウ」として知られるようになります。ジャックは伝説のコルテス(Cortes) の剣を探し求める冒険で寄せ集めの乗組員を率いて航海に出ます。若き海賊だった頃に悪名高いスペインの海賊ハンター、アルマンド・サラザール(Armando Salazar)を魔の三角海域に閉じ込めます。サラザールはスペイン海軍の高位の軍人として海賊狩り用の強力な戦艦サイレント・メアリー号(Silent Mary)のカピタン(Captain) を務めていました。彼は何年にも渡って海を恐怖に陥れ数千の海賊を殺害したのですが、ジャックがこの海賊殺しを陥れて謎めいた魔の三角海域で死に追いやるのです。サラザールを阻止できたのは、伝説の秘宝<ポセイドンの槍(Poseidon’s Trident)でした。

Jack Sparrow

他方、幽霊船に捕らわれた父ウィル(Will)を救うために息子のヘンリー(Henry)が探していたのもポセイドンの槍でした。そして、その在処を示す日記を持つのが美しき天文学者のカリーナ(Karina)です。宿敵のバルボッサ(Barbossa)を交え、それぞれの思惑が絡み合う中、危険な冒険の旅が始まります。果たしてジャックの運命は如何?

懐かしのキネマ インターミッション 映画と英語との出会い

その2 「The Sound of Music」

父は国鉄に勤めていました。そのため転勤は2年毎にあります。名寄の次は、最北端の稚内への移動です。稚内に米軍のレーダー基地があってそこに米兵が駐屯していました。英語の先生に連れられて始めて基地に入りました。そこでやったのはバラックのペンキ塗りのアルバイトです。それが終わると、飲み物が振る舞われました。得体のしれない黒い色のおかしな味をした液体です。今思えば、コカコーラでした。米兵は中学校の体育館やグランドでバスケットや野球の練習をしていました。なんと背の高い人種なんだろう、と思いました。稚内ではもう一つの出来事があります。始めて「洋画」を観たのです。【戦場に架ける橋】というのです。それからは親に隠れての「洋画浸り」の「不良」となりました。

The Trapp Family

時代は経て1964年の頃の札幌です。洋画好きな私に忘れられない思い出があります。【The Sound of Music】を名寄中学校で一緒だった女性と札幌劇場で観たときです。なるべく字幕を見ず、台詞に神経を集中させました。その頃、駅前通りには路面電車が走っていていました。苗穂方面に向かう電車の停留所前にパーラーIshidayaがありました。映画の興奮を冷ますためにIshidayaに入り、しばらくしてから彼女を駅まで見送りました。