ウィスコンシンで会った人々 その10 国旗掲揚と国歌斉唱と大学

国立大学法人化の大学は、今入学式とか卒業式で国旗掲揚と国歌斉唱を文科省から奨励されている。決して強制ではなく要請という内容と伺う。国からの依頼であるから、無視するわけにもいかないようだ。それにはいろいろと理由がある。

第一は、運営交付金を国から受けていることだ。大学の予算の大半はこの交付金で賄われている。大学がいかに学問の自由とか大学の自治をうたっても、首の根っこを交付金によって抑えられている以上、国の要請を蹴るわけにはいかないのである。

第二は、大学の改革が進んでいることである。学部の統廃合も行われている。こうした動きはすべて大学の自主的な判断でなされているのではなく、国の方針で進められている。こうした方針に沿わない大学はないといってもよい。国立大学の法人化以来、大学改革はどんどん進んでいる。教授会は経営とは切り離され、もはや腑抜けのようなありさまである。学長の権限は一段と強まった。

第三は、第一の事由と重なるのだが、大学の自治とは国から独立した財政があってはじめて成り立つのである。従って大学は、独自のルールによって入学金や授業を決め、民間や個人からの寄付を仰ぎ、産学協同研究を進めて、財源を確保することが必要なのである。だが、大学法人の大学に経営能力があるとは思えない。

しかして、今の大学はグローバルな環境で立ち向かえる一握りの大学を除き、ほとんどは運営交付金に頼らざるをえない。憲法第23条にある「学問の自由は、これを保障する」をいかにかざしても、それは犬の遠吠えなのだ。

文系学部の統廃合が盛んに云われ、危機感が漂っている。教員養成の学部も危ういといわれる。大学運営の危機に輪をかけているのが入学者の減少だ。どの大学も生き残りをかけていて、束になって国とやり合う力はない。自立の精神が欠けている。これが今の大学危機の最大の姿だ。

8323_l IMG_0761 Bascom Hall, University of Wisconsin