北方領土を考える その六 択捉島の産業

ロシアによる北方四島の実質的な支配とその強化は、現地企業の成長にも表れているようです。その筆頭は択捉島に本社がある「ギドロストロイ社」(Gidrostroy) という企業です。自前の船団を有し漁業や水産加工から建設業、さらには金融まで手がけています。かつては洋上で、獲れた魚を日本の業者と直接取引していた会社です。サケマスやカニなどを択捉島や色丹島に4つある工場で缶詰加工しています。そのため需要が急速に伸びている中国や日本の他かに、欧米や韓国にも輸出するという成長振りです。

ギドロストロイ社はロシア政府から優先的に漁業権の割当を受けているといわれ、豊富な水産資源を押さえています。ロシアの産業はすべて政府の許認可によるものです。お役所仕事には賄賂や接待、汚職がつきものです。日本の企業も許認可に必要な書類の作成や待ち時間に悩まされていると報道されています。円滑に事を運ぶために、恐らくは袖の下を使っているはずです。

会社の規模ですが、10年前は500人ほどだった従業員の数は3,000人を超え、択捉島では就労人口の大半がギドロストロイ社で働いているといわれます。島内には直営のホテルやスポーツジム、温泉まであります。建設業は、空港、港、道路、住宅、軍事施設など多岐にわたります。こうした工事を請け負うのもギドロストロイです。高い賃金や安定した仕事を求めて出稼ぎ労働者が集まります。

ギドロストロイ社の成功に深く関わっているのが、性能の良い日本製の機械の導入といわれます。そのため日本人技術者がビザで入国しています。冷凍機のほか、水産物の加工用の切断機やイクラの分離をする機械、缶詰の生産プラントが必要です。機械の操作や加工技術の指導、さらに修理や部品交換のため日本人技術者がかかわっています。水産加工場の写真を見ると、昔稚内にあった沢山の加工場の姿を思いだします。スケソウダラの肉で竹輪を焼いたり缶詰を作っていました。

2013年には島に渡るために1,450メートルの滑走路を有する空港も造られました。サハリンを経由して飛行機で択捉島へ行くのが一般的なようです。

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