旅のエピソード その40 「成熟と運転」

だんだん齢を重ねるにつれ、周りから「車の運転に注意しなさい」と言われるようになります。おまけに、「免許証を返上しては」というお節介が入ります。記憶が少しずつ衰え、反射神経と動作が鈍くなるからでしょう。しかし、運転技能というのは若いときの運転と比べて上達するということを言いたいのです。それはどういうことかといいますと、運転というのは単なる車の操作技能だけではないということです。

多くの車の事故はスピードの出し過ぎ、脇見運転などの不注意によるものです。運転中の事故は24歳までの初心者ドライバーに多いことも報告されています。運転手はたいがい、自分の車の空間が外界とは隔離した自由な世界だという錯覚に陥りがちなのです。ですから、運転中の車線の変更などで、周りからみていると危なかしく、まるで傍若無人のような追い越しをするのです。実に迷惑このうえない運転です。

An positive older woman sitting in a car showing a thumbs up

アメリカには、高齢者のドライバー用のクローバーマークやシルバーマークなどはありません。運転する時、前方の車両の動作を見ながら「あの運転手はお年寄りだな、」と感じ、余り側に寄らないとか、ゆっくりついていくという運転をします。それと、サイドミラーやリアミラーを頻繁にみながら、状況を把握するように努めるのです。

サイドミラーとリアミラーに後ろの車全体が写ったときは、車間距離をとっている状態です。このとき、車線変更をするのです。これはマナーというよりも安全運転の大事な原則です。アメリカで免許をとるとき、このことをきちんと教えられました。若いときにくらべて、危機を予測できるという成熟による智恵がついています。私は自分の運転は若いときに比べて格段に向上していることを断言できます。