英語のあれこれ その4 民主主義とギリシャ語

我々に馴染みの英語を取り上げる。すべてギリシャ語から派生したものである。それは「crat」という接尾辞がつく単語である。どれも国や為政の骨格を示すようなものとなっていて、好奇心をそそられる。

民主主義は”democracy”。この単語を分解すると、”demo”は民衆とか大衆という意味。”crat”は支持者とか統治者という意味である。従って、”democrat”は民主主義者ということになる。”cracy”は「〜階級社会、統治」ということである。このように”crat”の部分を”cracy”に置き換えると、「〜主義、〜政治」という単語ができるというわけである。ちなみに、アメリカの議会は民主党と共和党の二大政党からなる。”Democrat”とは民主党、民主党員というわけだ。

昔、ギリシャでは上流階級や貴族は”aristocrat”と呼ばれた。この単語を分解すると”aristo”は最も上のという意味であり、その語尾に”crat”がつくと最高位の人々となるわけである。アリストテレス(Aristotle)の業績は、やがて啓蒙主義やルネッサンスへ継承されたといわれる。その名前にふさわしい哲学者であった。

君主制というのがある。語源は古代ギリシャ語である。かつてのロシア帝国の皇帝とか大日本帝国の天皇のこと。これを”autocracy”という。”auto”とは自己の、己の、という意味である。従って”autocracy”は一人の者に権力が集中する制度、”autocrat”は独裁者に近い皇帝とか王となる。 “autocracy” は”dictatorship”, “totalitarianism”に極めて近い。

官僚主義もギリシャ語からきている。”bureau”は役所の部局のこと。そこで立案するのが”bureaucrat”である官僚だ。人民のニーズに対応する政策を考えるのではなく、特権的な人間の判断が幅をきかす制度が”bureaucracy”ある。

“Technology”も大事な単語だ。技術は”techno” 技術の専門家とか官僚のことはテクノクラト”technocrat”という。

能力主義という英語は “meritcracy”。接頭部分の”merito”とは美点とか、成果ということである。知的エリートのことをを”meritocrat” という。財産や階級の特権を振り回すのではなく、己の才能でのし上がった者だ。成果や働きに応じた報酬を”merit pay”という。

終わりに、偽善とか偽善主義を意味する”hypocrisy” がある。偽善者は”hypocrat” というように使われる。”hypo”とは低いとか下位の、といった接頭辞である。”hypothesis”は検証されるべき仮説や仮定ということになる。
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