心に残る名曲 その八 「トッカータとフーガ 二短調 BWV 565」

このオルガン曲、「Toccata and Fugue in D minor」は、あまたの音楽作品で最高傑作、最高峰に位置する一つといえそうです。私の思い入れもあります。1940年にウォルト・ディズニー(Walt Disney)が演出したファンタジア(Fantasia)の冒頭で演奏されて以来、世界中に広まります。演奏を指揮したのはアメリカで活躍したストコフスキー(Leopold Stokowski)です。

曲名にある用語のことです。トッカータ(Toccata)とは「触れる」、「弾く」とか「演奏家の妙技を示す」といった意味です。フーガ(Fugue)のことは既に説明しましたが、主題とその応答が交互に現れる対位法と呼ばれる多声音楽の形式のことです。この曲を聴きますと、異なる主旋律が互いに追い掛け合いをするように連続して演奏されます。バッハの作品にしばしば登場する演奏様式です。オルガンの木管と金管のコンビネーションが絶妙で、多くの演奏者はこの音楽についての理解が異なるようで、それが演奏の仕方に現れています。速い音符や細かな音形の変化などを伴い、即興的な楽曲を指し、技巧的な表現を特徴とするのがトッカータです。バッハが21歳のとき作曲したというのですからこれも驚きです。

ストコフスキーのことです。イギリス生まれですが主にアメリカで指揮者として活躍します。1912年にフィラデルフィア管弦楽団(Philadelphia Orchestra)の常任指揮者に就任し、この管弦楽団を世界一流のアンサンブルに育てたといわれます。ボストン交響楽団(Boston Symphony Orchestra)、シカゴ交響楽団(Chicago Symphony Orchestra)、ニューヨーク・フィルハーモニック(New York Philharmonic)、クリーヴランド管弦楽団(Cleveland Orchestra)と並んでアメリカ五大オーケストラに数えられています。