懐かしのキネマ その86 【エデンの東】

原題は【East of Eden】といい、旧約聖書(Old Testament) の創世記(Genesis) に登場するカイン(Cain)とアベル(Abel)の物語を下敷きにしたジョン・スタインベック(John Steinbeck)の同名小説を映画化した作品です。創世記における最初の夫婦であるアダム(Adam)とイヴ(Eve)の息子がカインがです。カインは農業に従事していましたが、彼の捧げた作物を神は喜ばず、神はカインよりもアベルを寵愛します。嫉妬によりカインは弟を殺します。後にカインは人類最初の殺人者として呪われます。

1917年、アメリカ合衆国カリフォルニア州(California) サリナス(Salinas)が舞台です。アダム・トラスク家(Adam Trask)には二人の息子がいます。キャル(Cal) とアーロン(Aron)です。キャルは反抗的で野性的です。他方アーロンは忠実で真面目な子どもです。アーロンにはアブラ(Abra Bacon)という恋人がいます。キャルは、秘密を探っていました。無賃乗車して、モントレー(Monterey)の港町でいかがわしい酒場を経営している中年女性ケート(Kate)を尾行していたのです。彼女が、死んだと聞かされている自分の母かもしれない人物だったと思っていたからです。

Cal & Abra

ある日、キャルは「父から愛されていないのではないか」という自分の悩みを兄、アーロンの恋人であるアブラに打ち明ける。すると、彼女も同じ悩みを抱えていたことがあったことをキャルに打ち明け、二人の心が近づいていきます。キャルは父アダム(Adam Trask)の企画していたレタスの冷凍保存に使用される氷を屋外に滑らせ砕いてしまいます。そのことで父から聖書の一説を引用した叱責を受ける中、「自分のことを知りたい、そのためには母のことを知らなければ」と母のことを問い質すのです。アダムは母との不和を話し、彼女は死んだということを伝えます。キャルはケートの店に向かい、彼女と直接対面するも話には応じられず追い返されてしまいます。その後、キャルはアダムの旧友である保安官から両親が結婚した時の写真を見せられ、ケートが自分の母だと確信するのです。

アダムは商取引で失敗し、損失を蒙り一家の財産がなくなります。キャルが軍隊に大豆を大量に卸すことによって得た利益、15,000ドルを得て感謝祭の日にそれを父アダムに渡そうとするのですが、戦争に悪感情を抱き、戦争を利用して大金を得たことをアダムは叱責して金を受け取りません。アーロンとアブラが婚約を伝えたように清らかなものが欲しかったと告げるのです。キャルは大声で泣き「父さんが憎い」と叫んで出て行きます。嘆くキャルをアブラが慰めているのを目撃したアーロンは激昂し、アブラにキャルのところに行くなと厳しい口調で伝えます。それに対してキャルは父への憎しみがいつしか兄への憎しみに変わり、母であるケートの酒場にアーロンを連れていき初めて彼に母と対面させます。驚いたアーロンを母と二人きりにさせてキャルが帰宅します。

James Dean as Cal

アダムにアーロンの行方を問われたキャルは「知らないね、僕は兄さんの子守りじゃないんだ」と返し、ケートが家を出た理由にも触れて父との決別を告げます。アーロンは、最も軽蔑する女が自分の母であったことを知って激しいショックを受け、自暴自棄になってその日のうちにヨーロッパ戦線に出征します。そして終戦の前年に戦死してしまいます。

アブラは自分の心の中にキャルがいることに気づき、心臓発作で病身のアダムのベッドの傍で必死に看病します。そしてキャルが父の愛を求めていたことを語り、キャルに何か頼み事をしてほしい、そうでないと彼は一生ダメになってしまうと訴えます。アブラは、絶望して病室に入りたがらないキャルを説得して父のベッドで再び許しを請うように促すのです。アダムの目が訴えるようになり、キャルがアダムの口元に耳を寄せると、微かな声で「代わりの看護婦は要らない。お前が付き添ってくれ」と告げるのです。確かな言葉で父の愛を知ったアブラとキャルとは涙します。そしてキャルは父のベッドの傍らに座るのです。