心に残る名曲 その三十二「Swing Low, Sweet Chariot」

このスピリッチュアルは、テネシー州(Tennessee)ナッシュビル(Nashville)のフィスク大学(Fisk University)で1870年代に活動していたアフリカ系アメリカ人グループ「ジュビリー・シンガーズ(Jubilee Singers)」によってアメリカ各地に広められた霊歌です。「Jubilee 」とは祝祭とか記念祭という意味です。

アメリカ南北戦争(Civil War)後に米国南東部のミシシッピ州(Mississippi)、アラバマ州(Alabama)、ルイジアナ州(Louisiana)にいた先住民チョクトー族(Choctaw)の奴隷が歌っていたのを採譜されたといわれます。作詞・作曲者は不明ですが、素晴らしい内容の歌です。

題名にはチャリオット(Chariot)とあります。チャリオットとは、兵士を乗せ馬に引かせる戦闘用馬車を指します。太古の時代、シュメール(Sumerian)、ヒッタイト(Hittite)、アッシリア(Assyrian、古代エジプト、ローマ、ペルシア(Persia)、古代中国、古代インドなどで戦闘用に使用されました。

Chariotに乗って天国へ昇る描写が旧約聖書にあります。列王記(Books of Kings)21章27-29節に登場するユダヤ人の預言者エリヤ(Prophet Elijah)が火の馬が曳く日の戦車に乗って天に昇っていく、という記述です。

なお、19世紀初頭のアメリカで南部州から黒人奴隷を北部州に逃亡させる活動をしていた秘密組織「地下鉄道(Underground Railroad)」を「チャリオット=北部州への亡命」という意味で使われたと指摘する説もあります。