旅のエピソード その20 「フットボールは情報合戦」

秋にアメリカへ行くときは是非カレッジ・フットボール(college football)を観戦していただきたいです。週末はかならずといってよいほど、どこかで試合をやっています。入場料は20ドルくらいです。

スタジアムへ行きますと、駐車場ではグリルでハンバーグやホットドックを焼いて景気をつける人々がいます。学生寮の側を通ると、ラジカセやCDプレーヤーのボリュームを一杯に上げて試合前の雰囲気をあおっています。学業からしばし解放された若い学部生がなにかを叫んでは気勢を上げています。いやがおうでも興奮が高まります。

フットボールは情報合戦のスポーツです。高いスタンドには偵察チームが陣取り、攻撃や守備のコーチに相手チームの弱点や強みを無線で教えるのです。戦争でいえば衛星を使って戦場を監視するようなものです。ラン(run)でいくかパス(pass)でいくか、キック(kick)で陣地を挽回するか、あるいはギャンブルするかなどの決定に必要な情報を与えるのです。

クォーターバック(QB)はチームの司令塔、いわば前線の指揮官です。それを動かすのが偵察チームからの情報であり、それに基づいてQBにプレイを指示するのが攻撃(offece)コーチや守備(defence)コーチです。一つひとつのプレイについて、コーチからの指令を受けたQBは円陣を組んで選手にそれを伝えます。この円陣のことをハドル(huddle)といいます。

選手は勝手な行動は許されません。一つ一つのプレイがこうした偵察チームからの情報によって決められます。戦争遂行の作戦と同じです。プレイのパタンはさまざま。それを組み合わせるのです。相手チームも同じように作戦を立てます。いかにして相手の裏をかくか、意外なプレイをするかをスタンドで予測するのがフットボールの醍醐味といえます。

留学を考える その61 ウィスコンシン州–French and Indian War

アルファベット順にアラバマ州(Alabama)から始まった高等教育機関の紹介もようやくウィスコンシン州(Wisconsin)にやってきました。アメリカ合衆国の大陸を東から西へ、北から南へと通ってきました。アラスカやハワイをいれると合衆国はとてつもなく広大な国です。人種も誠に地理、自然、気候、歴史など多士済々です。人種、文化、言語、宗教などの多様性を特徴とする国がアメリカです。まさにモザイックなのです。

ウィスコンシン州は北はカナダと国境を接し、東はミシガン湖が広がり、南はイリノイ州に囲まれ、西はミネソタ州とアイオワ州と隣り合っています。大昔、氷河が覆い、そのため土をけずって大小の湖ができました。氷河は石や岩を運びながらなだらかな丘陵もつくってきました。氷河がモレーン(moraine)と呼ばれる氷堆石を残したので、農場に岩や石があります。そのために平たい農場は少なく、酪農が盛んになりました。北海道に似た景色が広がります。愛称は「The やが State(あなぐま州)または「Dairy Land(酪農の地)」といいます。

場所は違いますが、モレーンの影響は今もブータンやネパールで見られます。それは洪水です。氷河の後退によってモレーンとの間に氷河湖ができます。ですが、温暖化の影響でしょうか、氷河の溶け具合が早く、モレーンの崩壊によって決壊し洪水を起こし、下流にあった村々に死者を出してきました。

ウィスコンシンにはもともとオジブワ族(Ojibwa)、ソーク族(Sauk)、チペワ族(Chippewa)、フォックス族(Fox)、キカプー族(Kickapoo)が住んでいました。ヨーロッパから多くの移民がやってきました。最初の白人は、フランス人探検家のニコレ(Jean Nicolet)です。1634年、カナダのジョージア湾(Georgian Bay)からヒューロン湖(Lake Huron)を経てカヌーでやってきたという記録があります。南からウィスコンシンにやってきたのはマーケット(Jacques Marquette)とジョリエ(Louis Jolliet)です。ミッシッピー川を遡って今のプレーリーヅシン(Prairie du Chien)というところに上陸します。1673年頃のことです。フランスが北米大陸を植民地化する政策の一環だったようです。フランス人はネイティブアメリカン部族を相手にした毛皮貿易商でもありました。やがて白人植民者によって部族は各地や追い遣られます。

時代は下り、1754年から1763年にわたり続いた植民地を巡るフランスーインディアン戦争(French and Indian War)の結果、イギリスが支援していた側が勝つとフランスが後退し、イギリスの統治が広がっていきます。とわいえ、フランス人が開拓してきたウィスコンシンには、今も多くのフランス語の地名や人名が数多く残っています。

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