懐かしのキネマ その35 ハリウッドと映画会社 その1 なぜロスアンジェルスへ

ハリウッド(hollywood)といえば、映画産業の中心地とかアメリカ映画を指す代名詞です。カリフォルニア州のロサンゼルス市(Los Angels)にあります。hollyとはヒイラギ、柊という意味ですが、もともとはイチジクの果樹園だったそうです。20世紀の初頭までは、映画製作の中心地はニューヨーク州(New York)マンハッタン島(Manhattan)の北部にあるフォート・リー(Fort Lee) とイリノイ州(Illinois) のシカゴ(Chicago)でありました。ですが、映画会社は東海岸から西海岸へと移っていきます。

映画会社が東海岸から西海岸へ移った第一の理由は、東海岸やシカゴの中西部は天候に恵まれず撮影時期が限られていました。しかも当時のフィルム感度は悪く、屋外のような明るい場所でしか撮影できなかったのです。天候に左右される映画撮影は問題でした。そのため、映画会社は、地中海性気候でまばゆい太陽が輝くカリフォルニア州(West Coast)に次々に移っていきます。そこで選ばれたのがロサンゼルスです。映画製作のために、大都会はもとより雪を抱く山脈、荒涼とした砂漠にいたる自然条件に恵まれていたのです。

第二の理由は、ロサンゼルスは労働者の組合が存在していない所でした。労働力は常に過剰気味で賃金水準はニューヨークの半分くらいでした。会社は映画製作に必要なコストを節約し、技術的な条件も克服していきます。安い労働力が経営者には魅力だったのです。

第三の理由は、人種差別が微妙に影響しています。当時アメリカの支配層といわれたのは、「ワスプ」(WASP: White Anglo-Saxon Protestants) という、社会、文化、政治など諸分野を寡占していた富裕層でした。白人エリート支配の保守派を指すのがワスプでした。アメリカの保守とはワスプという構図で成り立っていたのです。イタリア系やユダヤ系などの出自を表に出しては、スターにはなれなかった時代です。しかし、西海岸は人種のるつぼであり、誰もが成功者になれる風土を醸していたのです。こうしてハリウッドは、自然、労働力、多民族という3つの条件によって映画産業が発展していくのです。それと共に他の産業も経済も大いに発展していくのがカリフォルニアです。