クリスマス・アドベント その21 ”Ave Maria”

教会暦では降誕祭ともいわれるクリスマスは1月6日まで続く。ケーキやサンタクロースで浮かれたクリスマスは店じまいとなり、しめ縄飾りに切り替えるのはどうも節操がないような気がする。

筆者はどんな音楽にもこだわりなく楽しめる性分である。残念ながらというか仕方がないというか、どのような教会の所属するかによって、演奏したり歌ったりする音楽とそうでない音楽がある。カトリック教会から訣別したゆえに、ルーテル教会には決して演奏することのない音楽というか曲がある。「アヴェ・マリア」(ラテン語でAve Maria)という曲がそうだ。カトリック教会もマルチン・ルターが作曲した賛美歌「神はわが櫓」を歌うことはない。

これまでアヴェ・マリアはいろいろな作曲家が作ってきた。カトリック教会ではイエスの母、マリアを聖母として崇めている。アヴェ・マリアはマリアへの祈祷を指す。直訳すると受胎告知されたマリアに対して「恵まれた女よ、おめでとう」と呼びかける言葉である。ルカによる福音書(Gospel of Luke)1章26-38節の記述にある。

グレゴリオ聖歌などのミサ曲にも登場する。その他、祈祷のための教会音楽や祈祷文を歌詞にしたものなどさまざまな楽曲が存在する。16世紀スペインの作曲家トマス・ルイス・デ・ビクトリア(Tomas Luis de Victoria)やジョヴァンニ・パレストリーナ(Giovanni Pierluigi da Palestrina)、19世紀フランスの作曲家グノー(Charles Gounod)、同じく19世紀イタリアのロッシーニ(Gioachino Rossini)など多くの作曲家がアヴェ・マリアを残している。
https://www.youtube.com/watch?v=zDGMJsVzWNg

シューベルト(Franz P. Schubert)の晩年の歌曲「エレンの歌第3番」がアヴェ・マリアとして知られている。この曲はもともと宗教曲ではなかった。だが誰かがこの旋律にアヴェ・マリアの歌詞を付けて曲にしたとされる。このようにラテン語による典礼文を載せて歌うことは現代でもしばしばある。前述のグノーがバッハの「平均律クラヴィーア(Clavier)曲集 第1巻」の「前奏曲 第1番」の旋律にアヴェ・マリアをつけて完成させた声楽曲もそうだ。読者も必ずどこかで聴いたことがあるはずである。なおクラヴィーアとはオルガンを含む鍵盤を有する弦楽器のことである。
https://www.youtube.com/watch?v=mz7-6hC4tUs

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