「オハイオ」(Ohio)とは先住民族イロコイ族(Iroquois)の言葉で「美しい、偉大な川」を指すといわれます。この川はオハイオ川(Ohio River)のことです。西へ流れるこの大きな川は、17世紀の入植者たちの開拓へも大きな影響を及ぼします。というのは、後に開拓者たちはこの川を使って、西へ西へと開拓を進めてゆくことになるからです。
18世紀になりこの地にイギリスが進出し、ペンシルヴァニアやヴァジニアからやってきた人々により開拓が進められていきます。この地の領有権を巡ってはイギリスとフランスが対立し、フレンチ・インディアン戦争(French-Indian War)が起こります。戦いはイギリスが勝利し、1763年に締結されたパリ条約によりフランスはこの地を手放し、事実上北アメリカ大陸から撤退することになります。
州都はコロンバス(Columbus) で州の愛称は「トチノキの州」(The Buckeye State)となっています。州内には工業都市が多く、製造業は全米トップレベルです。中でも一番盛んなのは自動車関連産業です。ホンダも進出しています。プロクター・アンド・ギャンブル(Procter & Gamble: P&G)、ウェンディーズ (Wendy’s)、グッドイヤー(Good Year)などが本社を置いています。
ドイツからの移住者が作ったコミュニティであるジャーマンビレッジ(German Village)や、合衆国内最大のアーミッシュの共同体がある州でもあります。南北戦争の時代にはオハイオ南部は黒人奴隷廃止運動の拠点となります。かつて、オハイオ川の北側のオハイオは黒人にとって自由州、南側にあったケンタッキーは奴隷州であったため、南部の黒人を北部に逃すアンダーグラウンド・レイルロード(Underground Railroad)という地下組織がひそかに活動していました。奴隷反対派・賛成派が激しくぶつかる土地がオハイオ州です。
大統領選の時などは宗教、人種、文化的背景があることによって、民主か共和かほぼ半々で最後まで州全体の投票の行方が分かりづらい州と呼ばれ、そのため「 Swing State」と呼ばれています。候補者からはキャンペーンの要として、選挙の結果の中継では国民全体が最後まで行方を注目する州の一つです。1964年から2016年までオハイオ州で勝利した者が大統領に当選しており、「オハイオ州を制するものが大統領選を制す」と呼ばれる所以です。ただ、ジョン・ケネディ(John F. Kennedy)とジョー・バイデン(Joe Biden)の二人は、オハイオ州で破れながらも当選した大統領です。