心理学のややこしさ その二十四 ザイアンスと情動の心理

ポーランド(Poland)生まれの心理学者にロバート・ザイアンス(Robert Zajonc)がいます。16歳のとき一家はナチスのポーランド侵攻の間隙をぬってワルシャワ(Warsaw)に逃れます。2週間住んでいたビルが爆破されて両親を亡くし、本人も病院に収容されます。回復後は労働者強制収容所へおくられます。他の囚人と脱走しフランス国境に着きます。しかし、そこで逮捕され投獄されます。再度の脱獄後、レジスタンス(French Resistance)に加わりながらパリ大学(University of Paris)で学びます。

第二次大戦後は釈放され、イギリスを経てアメリカに渡りミシガン大学で心理学の学位を得ます。ミシガン大学では1994年まで教授として努めます。ザイアンスの心理学研究のテーマは「単純接触効果(mere-exposure effect)」という話題です。与えられた刺激が繰りかえされると、被験者が意識しようとしまいと知覚や態度に変容をもたらすという現象です。

ザイアンスは実験の中で幾何学模様のイメージなどをランダムに被験者に瞬間的に提示します。被験者はどれを繰り返し見せられたかを識別することが困難です。その後、どのイメージが好みだったかを尋ねられると、被験者は一様に最も頻繁に見せられたイメージを選んだというのです。

この選択は親密性が態度に変化をもたらし、馴染んだ刺激に対する愛着ないしは好みを育むというのです。接触の回数が増せば増すほどこの程度も上昇するのです。いわば、「見れば見るほど好きになる」というわけです。