囲碁にまつわる言葉 その3 【先手と後手】

 八王子囲碁連盟の前身、碁老連の趣旨が少しずつ変わります。「ボケ防止のために、老人囲碁同好者の誰もが碁を楽しむことができるように機会と場所を確保する」というユーモラスな表現となっていきます。惚けとか痴呆、認知症という用語が広まってきたことがその背景にあるようです。高齢化社会がますます進行する時代です。「ボケ防止」はどうしたら実現するのか。「どしどし囲碁を打とうよ!」というのはあながち間違いではなさそうです。

この手は先手?


 しかし、碁を打っていればボケは防げるというのは、少々うさんくさい感じがします。近所に読書が好きで、俳句を作る90歳のお婆さんがいます。俳句の会にも参加しているのです。要は趣味を楽しむこと、人と会話すること、適度に運動すること、規則正しい食生活をすること等々、なんらかの姿勢や生き甲斐を持っていることが大事なようです。

—–【先手と後手】——–
 将棋は指す、囲碁は打つ、と言います。逆の表現はありません。囲碁では先手が黒石を持ち、後手が白石を持ちます。棋力が拮抗している者の対局では、先手と後手を決めるとき、ニギリが行われます。囲碁では先手が有利なため、後手に一定量の地を「コミ」として六目半を加算します。江戸時代にはコミがなかったといわれます。そのため、石を交代し2局を打ったたようです。「先手必勝」とはよくいわれますが、「先手必敗」という言葉は聞かれません。 

 対局において、盤上のある箇所に打つと大きな得をする手段が残る場合があります。通常相手はそれに受けます。そうしないと大損をするからです。先の対局者の着手を先手といいます。相手は、先の対局者に得をさせない着手で応じます。この着手を後手で受けるといいます。「先手をとる」とか「後手をひく」などの言葉ですね。前者は「機先を制す」「先に動く」、後者は「先を越されて受身になる」などの意味となります。

 石を取るか取られるかの戦いなどの場合、互いに手を抜けずに相手の着手の近くに着手することを繰り返します。その最後の着手を「後手を引く」といいます。先手を打たれても、大きな損をしないと判断すると「手抜きする」こともできます。この場合は、「手を抜く」ともいいます。
 ”後手”、”後手をひく”は英語では「defensive hand」「lose the initiative 」「passive move」などといいます。先手に対して堂々と受けて、じっと先手を待つのが碁の要諦のようです。