ユダヤ人と私 その21 「学びの宗教」

このシリーズの[その1]でミルウォーキーの近くに住む医師で熱心なユダヤ教徒であるDr. Robert Jacobs一家のことに触れました。国際ロータリークラブの会員で地域貢献活動にも極めて活発な方です。Jacobs氏はユダヤ系といってもアシュケナジム(Ashkenazim)です。ドイツ系ユダヤ人のことです。国際ローターリークラブ奨学生であった私のスポンサーでもありました。

アシュケナジムのユダヤ人は子供の教育を大事にしています。週2回、子供達をシナゴーグ(Synagogue)での教典の勉強会に通わせています。神と人間との関係を定めた「トーラ」(Tola)」、慣習や倫理、専門知識など、より具体的に人間同士の関わりについて定めた「タルムード」(Talmud)を学ばせ、大人への仲間入りを準備させるためです。Jacobs氏は子供にヘブライ語も学ばせていました。近くにユダヤ人学校がないために公立学校で勉強させ、下校後シナゴーグで勉強させていたといいます。

ユダヤ教は、経典を学習する「学び」の宗教であると主張する学者がいます。この学者によればタルムードの解釈をめぐっては、先人たちの考えを決して鵜呑みにしないのだそうです。今の時代に合わせて教えが妥当するのかを検証します。そして様々な新しい視点を取り入れて議論しながら、幅広い知識を身につけるのユダヤ人の学習スタイルだといわれます。

特にアシュケナジムのユダヤ人には、教育は投資であるという徹底した考え方があります。彼らの多くは公教育のレベルが非常に高い地域や名門私立校のある街を選んで暮らします。たとえその街の固定資産税が高くても、自分の子供にとってベストな環境を選ぶといわれます。子供達に高い望を期待するのがユダヤ人です。学力のみならず、道徳的な基盤となる人格形成もユダヤ人の教育機関が担っています。

ユダヤ人が集まった街があちらこちにあります。その代表的がイリノイ州(Illinois)のスコーキー(Skokie)です。1960年代には40%の人口がユダヤ系だったそうです。2009年には、イリノイ・ホロコスト博物館兼教育センター(Illinois Holocaust Museum and Education Center)がスコーキーに造られます。いうまでもなくユダヤ人の浄財によるものです。