懐かしのキネマ インターミッション-映画と英語

その1 「Jack and Betty」               

巣ごもりの中、27インチのMacでいろいろな映画をみる機会がありました。そして映画鑑賞の遍歴を振り返っています。今もロマンス、喜劇、西部劇、ミステリー、SF、ミュージカル、冒険、歴史など節操がないほどいろいろなジャンルのものを楽しんでいます。

戦争が終わったとき、私は美幌のど田舎におりました。樺太から引き揚げてきたとき、親戚がそこにいたからです。やがて始めて見るトラックに乗った米兵がやってきました。美幌には旧陸軍の航空隊がいました。その飛行場に進駐してきたのです。トラックからはチューインガムが投げられ、それを競って拾ったものです。

「レーション」と呼ばれる携行食を父が貰ってきました。勤務する美幌駅には進駐軍の将校用の車両が停まっていました。そこから手に入れたようです。レーションにはカンパン、コーヒー、タバコが入っていました。すべて缶詰です。パイナップルの甘さには驚きました。なにせ砂糖がまだない頃です。美幌といえば、NHKで英語会話講座を22年間も担当した松本亨氏の生まれ故郷です。

Jack and Bettyの教科書

やがて父の転勤で美幌から名寄に移りました。名寄中学校では始めて英語を習いました。今の子どものように幼稚園から勉強するなんて考えられない頃です。幸い私は良い先生に出会いました。この先生の名前は藤田??。髭と眉が濃く声はバリトンでした。藤田先生の発音は、まるで真っ白の紙に滴が垂れるように、私の耳には実に新鮮でズンズンと伝わってきました。使った教科書は「Jack and Betty」。なんともクラッシックなタイトルではありませんか。表紙にはジャックとベティがさっそうと歩いています。私の英語の勉強法は、文章をそらで覚えることでした。なぜかスラスラと頭に入るのです。昔の英語の指導というのは、教科書を教師が読みそのあとに子どもが復唱するというものです。復唱をなんどもなんどもやると、文章が脳にすり込まれるのです。その頃本屋で手にした「洋書」を見ながら、鼻をクンクンさせて、異国の香りにも浸りました。