旅のエピソード その19 「フットボールとビジネスモデル」

アラバマ州(Alabama)の小さな街タスカルーサ(Tuscaloosa)にアラバマ大学(University of Alabama)の本校があります。1831年に創立された州立の総合大学です。タスカルーサのあたりは、南部の南部、Deep Southと呼ばれます。街を歩くと白人はあまり見かけません。なんとなく寂しさが漂う街です。「南部に来た」という気分になります。

アラバマ大学はカレッジ・フットボールでは強豪として知られています。かつてポール・ブライアント(Paul Bryant)というヘッドコーチ(監督)の指揮により、計13度にわたり全米チャンピオンとなっています。このコーチのニックネームは「ポール・ベア(Paul Bear)」として親しまれました。トム・ハンクス(Tom Hanks)主演の映画「フォレスト・ガンプ(Forrest Gump)/一期一会」はアラバマ大学フットボール部がモデルとなっているほどです。

アメリカのカレッジ・スポーツでは、フットボールが稼ぐ収入と貢献度は突出しています。多くの大学では全スポーツからの収入の6割前後をフットボールで占めるくらいです。収入の多いスポーツとしてはバスケットボール、アイスホッケーなどが続きます。それだけにフットボールのヘッドコーチの年収も桁外れです。その額は大学の総長をはるかに凌ぎます。

フットボールチームのコーチで最も高い契約金をもらっているのが、アラバマ大学のニック・セイバン(Nick Saban)で約8億5000万円、第二位はミシガン大学のジム・ハーボー(Jim Harbaugh)で約8億4000万円をもらっています。大学で最もスポーツからの収入が多いのはテキサス大学で約98億円、第五位のウイスコンシン大学も約77億円の収入があります。これが収入のない他のスポーツ活動の運営を支えています。選手達の奨学金にも振り分けられています。

カレッジ・フットボールは全米に放映され、その広告料は膨大なものです。フットボールは大学のビジネスモデルの典型です。「”ポール・ベア”・ブライアント」はビジネスモデルを全米に知らしめた偉大なコーチとして今も語り草になっています。