IEPはどうなっているか その13 Santa Clara市学校区の教育心理的サービスに関する報告書  その5 登下校の行動に関するIEP

登校や下校の方法を学ぶことは、どの子どもにとっても大事なことだ。スクールバスの乗降の仕方にもさまざまなスキルが要求される。しかし、その方法を習得することが困難な生徒も多い。簡潔な指示や分かりやすい題材を用意し、課題が難しい場合はお助けヒントのプロンプトをだし、子どもが反応できたら、直後に子どもの好きな物や活動、褒め言葉をだすなどが指導の基本となる。以下に紹介する記録は、通学バスの利用の仕方である。これも応用行動分析(Applied Behavior Analysis: ABA)の技法である。

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計画承認日:1995年1月19日
生徒氏名:A. B.
年令:16才
生年月日:1978年
教師:A. S.
実施学校:Santa Clara高校

1. 標的行動についての記述
標的となる行動とは、Aがシートベルトを開放して外す、座席から離れる、席を替わる、他の生徒を殴打する、または奇声をあげることである。

2. 介入適用の理由
Aがバスに乗車中、一定場所でシートベルトを着用した状態は、彼女の安全の観点から必要だからである。

3. 安全な抑制が用いられること
段階的な安全抑制を含む以下の手順が含まれる。

・前触れとしての状況:
自分の席に誰か座っている。命令的な仕方で指示される時。病気の時。

・強化子:
褒めることや注意を与えること、雑誌(Avon, ads, coupons)等、食べ物、図版カード、学校での好きな活動、たとえばパソコン、化粧や爪の手入れに熱中すること、地域への外出、家庭でテレビの時間、リュックサックのおもちゃ、お菓子の包みなどを強化子とする。

・介入指導:
Aの学校への行き帰りでのバス乗車に関する家庭・学校、通学途上における一貫した介入指導を行う。

1. 保護者は、バスの乗車前のAに対して、とるべきいつもの手順や行動について思いおこさせる。さらに保護者は、Aに対して、彼女がバスの中でふさわしい安全に必要な行動がとれれば、帰宅してからテレビを見ることができることも言葉で想起させる。

2. 保護者、学校職員、そしてバス運転士は、Aに穏やかな言葉で安全乗車が必要であることを指示し、指示や適切な結果や褒美がもらえることを気付かせる。
a. 職員は、Aにとってバスでの登校が、安全で適切に行われるための援助者であることを強調する。さらに、褒美としてはクラスの活動で特に好きなこと、朝食、絵カードなどを想起させる。

3. 運転士は、Aをバスに迎えると適切な行動をとれると褒美が与えられることや、自分がAの援助者であることを彼女に思い起こさせる。このような声かけをすることは、教育委員会が定めている。

4. 適切なおもちゃや書籍は、彼女の背負い袋に入れておく。

5. Aには、バスの後方に自分の席を割り当てられて、監督を受ける。

6. もし、Aが座席の留め金を外したり座席を変わろうとしたら、運転士は言葉でAに注意する。例えば、普通の語調で、「自分の席に座って、座席のベルトを締めなさい」などといった具合である。

7. 「いつ/そのとき」という関係や状況を明確に指示する。例えば、「シートベルトをして座っていたらラジオが聞けるよ」といった声かけである。

8. もし行動が安定しそれが持続した場合、彼女に対してバスのステッカーが貰えることを思い出させる。

9. もしふさわしい行動が継続、ないし持続しない場合、「〜しなさい。そうでなければ、あなたのおもちゃ/本を取り上げますよ」とAに注意を促す。

10. もし、ふさわしくない行動が継続し、拡大するような場合は、Aや他の生徒に危険を及ぼすような場合は、運転士は道路の安全を見計らって車を停車させる。
a. 運転士は、Aがおもちゃや本を手放すように指示し、取り上げる。次のバス停でそれを返してもらえることも伝える。

11. もし、ふさわしくない行動が継続し、拡大するような場合は、運転士は次の段階の安全かつ適切な選択肢のために責任者と協議する。

12. ふさわしくない行動が継続する場合は、通学責任者はただちに校長と協議する。

校区が広いアメリカ。黄色いスクールバスはどの街でも走っている。どのバスも年期が入っているが極めて頑丈につくられている。民間業者によって運営されている。

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IEPはどうなっているか その12 行動介入IEP その4

問題とされる生徒の行動への対処は、多くの場合、特別支援教育の基本とされる手法が使われる。応用行動分析、Applied Behavior Analysis: ABAである。生徒ができる適切な行動を増やしていくことで、相対的に不適切な行動を減らしていくという方法を採用する。生徒を取り巻く環境に解決の糸口を求めることで、行動の改善を図ろうとする視点で、生徒の行動に介入する。以下の記録は、そのことを詳しく伝えているので参考になる。

生徒氏名:A. B.
年令:16才
生年月日:1978年
教師:A.S
実施学校:Santa Clara高校

行動分析に関する評価についての要約
Aは、課題から別な課題に移る間や、自分が欲しない課題をすることを要求されたときに、欲求不満を表わす。彼女は、通常、哀れっぽく泣いたり、奇声を発することによって自分の欲求不満を表現する。時々、Aは、備品とか身の回りの物をたたき、椅子を投げるというように非常に興奮した状態になることもある。彼女はまた、たまたま彼女のそばにいる仲間への攻撃とか、課題をするように指示するスタッフへの攻撃を向ける。スタッフへの殴り、のどへの攻撃、服のひっつかみ、咬みつきなどの局面では、非常に興奮した状態になる。

先行な動作、結果、標的行動に関する詳細なsベースライン・データなどのついては、付随する評価報告に記述されている。

I. 行動の類型
A. 標的行動について
○哀訴や反抗への介入
身体的抵抗:
クラスまたは、地域社会から逃げだしたり、テーブルの下をはいまわったり、視線を合わせることを避ける行為のことである。
破壊:
身近にあるもの、テーブル、コンピュータ、いす、ロッカー、窓をたたいたりすることである。
攻撃:
クラスメイトに対して:たたいたり押したりすることである。
スタッフに対して:
叩く、押す、蹴る、のどをつかむ、あるいは咬みつくことである。

B. 選択/代替行動について
哀訴や奇声:正常な声をだす。
身体的抵抗:二つの領域から活動を選択させる。
破壊:席につけ、水を飲ませる。
攻撃:スタッフから離したり、寝かせたり水を飲ませる。

C. 目標と目的:適切な目標に関するIEPリストからの記録
職業訓練目標:絵で描かれた日課
職業訓練目標:集団活動
地域社会目標:ニーズを表現するための携帯用コミュニケーションブックの使用
社会的/情緒的目標:通常学級への出席
学習目標:与えられた課題への取組み

II. 行動介入
A. あらゆる生活環境における介入の場
□学校  □家庭  □地域社会  □仕事 □その他

B. 予防
1. 生活様式の高揚:(望ましい変化の一覧表)
・健常な仲間との統合を拡げる。
・グループ活動への参加を拡げる。
・身体運動活動への参加を拡げる。
・学校計画における絵を使った日課表による行動予測を拡げる。
・課題達成見込みについて予測を拡げる。

2.行動の代替(教示または、行動の代替についてのステップの一覧表)
哀訴:正常な声を出すよう指示したり、意図的に行動を無視していることをAに気付かせる。
奇声:Aに緊張をほぐす姿勢である“タートルポジション(床にうつ向け)“を教え、または別の指示を選択をさせたり、褒美をとりあげる。
破壊:寝かせて“タートルポジションをとりなさい“と指示する。
攻撃:寝かせて、危害を加えるような行動を抑えるために“タートルポジションをとりなさい“と指示する。

3.積極的処置(先行動作、結果または、教育計画における計画変更の一覧表)
・積極的強化:望ましい行動に賞を与える。
・強化:望ましい代替行動をするとき、ポジティブな強化を与える。
・他の行動についての異なる強化:望ましくない行動が起こった後は、一定時間は強化を与えない。
・自然な強化についての認識:活動または、行動についての自然に起こった結果である強化子を使用する。つまり調理活動をしたあとは、食べ物を食べることを褒美とする。
・漸次接近行動:標的行動に徐々に近ずくような行動については、僅かでも見られる積極的な変化を強化する。

4. 変容の設定(誘因、環境、活動、カリキュラム、教育方略、予測等についての 修正の一覧表)
・Aは、教師の近くで作業をするようにする。
・個別の日常スケジュール、計画の変更などは早めに知らせ、Aが適切な選択ができるように配慮する。
・Aに対して、日常の課題が作られそれが説明される。
・ルールや課題を説明する。
・自分が好きでないこと指示されたとき、課題を終えたときに与えられる褒美に随伴して、別の行動が与えられる。
・不適切な行動は無視され、適切な行動や活動には強化が与えられる。
・適切な行動を助長するために、まわりの仲間を強化するとともに不適切な行動を無視する。
・不適切な行動の代わり、適切な行動について指導したり別な指導を行う。
・教示の代わりや娯楽行動:正しく発声するよう指示したり、タートルポジションをとらせる。
・自分のニーズを適切に伝えれるように、機能的コミュニケーションシステムを用意する。

C. 標的行動に関する反応
最も少ない制約から最も多い制約を伴う介入の経過についての計画を列挙し、そのステップを含む。
・哀訴:正しくしゃべることや望ましくない行為に対しては、意図的に無視されることを気付かせる。
・奇声:正しくしゃべるよう、言葉で注意を促す。
・強化子を徐々に減らすようにする。
・適切な行動について彼女に気付かせる。すなわち、「Aさん、わかりますね。これが欲しければ普通のいいかたで言ってね。」とか、「こっちを向いて。両手を出さなくても誰もそれをとったりしませんよ。」などによって、褒美が減るのではないかという恐れを抱かせないように配慮する。
・日課や自分のすべきことに気付かせるようにする。
・褒美が得られることに気付かせる。この場合は、日課を描いたカードで選択させたりする。
・褒美があったり、なかったりする活動を選択させる。この場合も、活動を描いたカードを選択させる。
破壊:
・「タートル・ポジション」をとることをAに口頭で告げ、もし、彼女がその指示に従わないならば次のステップを考える。
・彼女が、いすに腰かける準備ができているかどうか彼女に尋ねる。もし、Yesならば、次のステップを考え、もし、Noならば床に1分間腰をおろし、それからもう一度尋ねる。
・椅子に1〜3分座らせ、それができたら即時に水を与え、1分後に好きな雑誌を与える。
・散歩をさせる。
・活動に復帰させる。
・攻撃:
・「タートル・ポジション」をとるようにAに口頭で告げ、もし、その指示に従わないならば次のステップを考える。
・床に横になることを命じ、平静にさせる。(1分間)
・彼女がいすに腰かける準備ができているかどうかを尋ねる。もしYesならば、次のステップを考える。もしNoならば、1分間、床に腰をおろし、その後もう一度尋ねる。
・椅子に1ー3分座らせ、それができたら即時に水を与え、1分後に雑誌を与える。
・散歩をさせる。
・活動に復帰させる。

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IEPはどうなっているか その11 Santa Clara市学校区の教育心理的サービスに関する報告書 その3

Santa Clara市を訪問したとき、頂戴したIEP関連の書類に入っていた一生徒の記録である。このような書類を外部の者にくれるというのが興味あるところである。個人が特定されなければよいという考えがある。他の人にも役立ててもらおうという精神がある。以下にこの記録を紹介する。

【コミュニケーション】
1. 受容
Aは、SICDで受容言語年令が3才8か月の範囲にある。彼女は、48か月レベルにおいてもいくつかの正反応を示した。他者から言われることを真剣に聞こうとし、あるいは注意をそらさないでいれば、それを理解できる。彼女はうまく話し言葉をとらえて、1〜2つの指示を理解し、それに従うことができる。ただ複数の指示や3つの行動を含んだ指示に従うことは困難である。

2. 表出
Aの言語年令は、4才レベルまで正反応を示し、36か月の発達の範囲にある。彼女はしばしば誤って発音し、ほとんどの場合、正しい発音にならない。しかしながら、いくつかの音を正しい言葉により近いものにできる。3つの数と3つの単語の復唱ができるが、それ以上は困難である。何かをするに高い動機づけがある場合、よく知っている状況や自分の好きなことであれば5〜6語文を使うことができる。ものの機能を尋ねる質問、例えば、どんな本?とか、what、when、whoを含んだほとんどの質問に答えられる。難しいのは、複数形の使用、if-whatの質問への答え、’how many’を理解することなどである。

Aは、時々非常に早口で、甲高く、いななくような声で話しする。ゆっくりと話すことを求められれば、わかりやすく話しができる。だが相手に十分理解しやすいように話すよう求められるのは、非常に高いフラストレーションとなる。機嫌が良い場合には、上手に話し、まわりのほとんどの人が彼女の言うことを理解できる。

3. 地域社会
Aは、いろいろな地域社会資源を積極的に活用している。彼女は、商店、モール、郵便局、図書館、公園、博物館、特別な催しなどいろいろな場所へ2〜3名の生徒と1名のスタッフメンバーの小グループとで行動できる。公共交通機関に乗り座席を選び、小冊子を読んだり、スタッフや級友と会話をしたりできる。自分が降りるべきバスの停留所を見つけその場所で降りられる。

彼女は、買い物が大好きである。浪費することはない。少しの助言で漫画とかテーマブック、飲み物、スナック菓子を選択し購入できる。図書館カードを持って月に2回は図書館を利用する。時々姉と一緒に映画館へも行く。授業の一環で、ある映画のプロダクションへ行ったこともある。

4. 教室での行動
教室にはA用の机があるが、机上が様々な活動で散乱していることが多い。彼女が興味のある活動を選択している場合、30分間は援助なしで活動できる。また、数唱、分類、ファイリングの課題訓練を強化を随伴されながら30分間は自分の机で課題をすることができる。機嫌が悪いときは、行動は低下しスタッフの援助を受けることが難しくなる。

【要約と提案】
Aは、認知機能が5才から6才程度の中度発達遅滞とてんかん性異常波のある17才の少女である。彼女の相対的に優れている点は、地域社会と余暇時間の活動に現われており、相対的に弱い点は、受容言語と表出言語である。ほとんどの領域において、前回の評価と同様のレベルを示しているが、彼女の日常行動と教室の成績は、過去3年間を上回る大幅な改善がみられた。

Aには、Santa Clara高校での現在のプログラムを継続し、地域社会や学校を基本にした環境で自助行為、地域社会、コミュニケーション、認知、運動スキルに焦点化した指導の強化を継続することを提案する。彼女は、現在の話し言葉/言語が、地域社会環境で適切となるようなスキルをめざし続けることも提案する。さらに、学校や交通機関の利用についての行動マネジメント計画がさらに更新されて、指導が継続されることも提案する。

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「公認心理師法案」に関してーー注意を喚起したい

現在、心理職の国家資格化に関するいろいろな論議が進んでいます。先月、「公認心理師法案早期実現のお願い」という文書が臨床心理職国家資格推進連絡協議会、医療心理師国家資格制度推進協議会、日本心理学諸学会連合、一般社団法人日本心理臨床学会、一般社団法人日本臨床心理士会の連名でだされました。

今年の6月16日に「公認心理師法案」が国会に提出され、9月29日からの臨時国会の文部科学委員会で審議される運びとなっています。この法案にうたわれる「公認心理師」なるものは、特別支援教育士とか臨床心理士といった資格をお持ちの方々には直接関わる事案です。既存の資格を取得するために、多くの投資をされた皆さんには大事な法案だと考えられます。すべて「公認心理師」によって、こうした資格がどうなるかです。

この法案で皆さんに大事だと思われるのは第二章の試験です。以下のような案となっています。(受験資格)にはこれまでの資格を有する方々へはなんの配慮もされていません。所定の心理学関連の単位を取得していれば受験資格があるとあります。
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第二章 試験
(資格)
第四条 公認心理師試験(以下「試験」という。)に合格した者は、公認心理師となる資格を有する。
(試験)
第五条 試験は、公認心理師として必要な知識及び技能について行う。
(試験の実施)
第六条 試験は、毎年一回以上、文部科学大臣及び厚生労働大臣が行う。
(受験資格)
第七条 試験は、次の各号のいずれかに該当する者でなければ、受けることができない。

一. 学校教育法に基づく大学(短期大学を除く)において心理学その他の公認心理師となるために必要な科目として文部科学省令・厚生労働省令で定めるものを修めて卒業し、かつ、同法に基づく大学院において心理学その他の公認心理師となるために必要な科目として文部科学省令・厚生労働省令で定めるものを修めてその課程を修了した者、その他その者に準ずるものとして文部科学省令・厚生労働省令で定める者
二. 学校教育法に基づく大学において心理学その他の公認心理師となるために必要な科目として文部科学省令・厚生労働省令で定めるものを修めて卒業した者その他その者に準ずるものとして文部科学省令・厚生労働省令で定める者であって、文部科学省令・厚生労働省令で定める施設において文部科学省令・厚生労働省令で定める期間以上第2条第1号から第3号までに掲げる行為の業務に従事したもの
三. 文部科学大臣及び厚生労働大臣が前2号に掲げる者と同等以上の知識及び技能を有すると認定した者
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社団法人日本心理学会が認定する民間資格に「認定心理士」があります。一般財団法人特別支援教育士資格認定協会の「特別支援教育士」もそうです。さらに臨床心理士があります。言うまでもなく日本臨床心理士資格認定協会が認定している資格です。こうした資格がどうなるのか、ということを提起するのが「公認心理師」です。

私なりにこの法案を調べましたが、次のような疑問が浮かんでまいります。まず「公認心理師」とは、いろいろな専門性を有する人々の民間資格をうやむやにする懸念があることです。例えば、臨床心理士の資格です。この資格は信頼性が高く、心理士系の資格の中では就職に有利と言われている資格です。臨床心理士では、認定心理士とは異なり、心理学に関し学んでいる学術のレベルが違い、クライアントに提供できる技能の質が違っています。同じように特別支援教育士も専門性のある資格です。臨床心理士側は、「公認心理師」のレベルが低く双方の資格の価値が下がることを危惧しなければなりません。しかも、現段階でイメージされる公認心理師では、臨床を経験することは困難です。

先に述べましたが、すでに民間資格をとった人は、資格をとるために多額の投資をしています。講習会の旅費、認定料、資格更新の受講料などです。その投資が今やどぶに捨てるような事態になりつつあるのです。また高い受験料や認定料を支払って「公認心理師」を取得しダブルライセンス保有者となったとしても、これまでの資格はなんの役にも立たなくなる可能性もあるのです。

海外の資格の多くで、例えば臨床心理士であるClinical Psychologistになるための要件は、博士号を有すること、そして臨床の経験があるということです。我が国の民間資格はどれも学会に属して受験資格を得るといういわば、系統的な単位を取得し専門性をつけるということを重視しないところに課題があります。いつも民間資格の質が問われるのが我が国の有様です。「公認心理師」が学部卒で取れそうだという点に大きな疑問と不安が湧きます。

「公認心理師」の出現によるメリットとはですが、皮肉にも臨床心理士も公認心理士も特別支援教育士も更新する必要がなくなることです。もしかしたら消滅するのでは、という懸念もあります。たとえ存続するにせよ、更新のための費用は「公認心理師」を含めてとられることを覚悟しなければなりません。そんな資格を持っても一体役に立つのかを自らに問う必要があると考えます。

最後ですが、「公認心理師法案早期実現のお願い」の要望書には次のようにあります。

「今日、国民のこころの問題(うつ病、自殺、虐待等)や発達・健康上の問題(不登校、発達障害、認知障害等)は、複雑化・多様化しており、それらへの対応が急務です。しかしこれらの問題に対して他の専門職と連携しながら心理的にアプローチする国家資格が、わが国にはまだありません。国民が安心して心理的アプローチを利用できるようにするには、国家資格によって裏付けられた一定の資質を備えた専門職が必要です。」

問題としたい点は、最後のフレーズです。国家資格によって裏付けられようとなかろうと、民間団体がこれまで認めてきた者は、一定の資質を備えた専門職であるということです。「国民が安心して心理的アプローチを利用する」には、高度の専門教育を受け、長い臨床実践を経た者が必要なのです。国家資格ではありません。「公認心理師って一体全体なんなのか、その専門性とは一体何か、保護者や子どもその他クライアントのことを念頭に置いているのか、、 認定団体は自己保身的ではないか、、、」を国民は問うことになるでしょう。

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IEPはどうなっているか その10 Santa Clara市学校区の教育心理的サービスに関する報告書 その2

前回はSanta Claraの一高校生に行った2度の検査結果の一部を記した。検査は継続的に実施することによって、生徒の発達状態を理解することができる。今回は、検査結果を分析した内容を紹介する。こうした文書は、保護者とか新たに加わる支援者への説明には大変役立つものである。

1. 認知
Aは,視覚知覚と極微細運動による非言語性認知テストであるLeiterを受けた。その結果であるが,Leiterの検査結果では精神年令の5才10か月,IQの42で前回と同様の結果であった。また,レベルIVでは全ての項目を通過した。レベルVでは3/4の項目を,レベルVIでは1/4の項目を通過した。しかし,レベルVIとVIIでは,全ての項目を通過しなかった。彼女は,自分の力で数字をマッチングさせ,言葉で分類し,基本的な操作をし,色,形,数字の組み合わせによるマッチングができる。

それに続くレベルの高い課題では,最初は正しく反応したが,項目の中間や終りの方では下位項目で誤反応を示した。Aは,まれに視覚的に注視することによる援助を求めていた。検査者が検査項目を素早く提示した場合,概ね良好な反応を示した。

2. 微細運動/知覚運動
Aは,鉛筆で線と幾何図形を模写する能力をテストする視知覚運動統合テストであるBeeryが実施された。彼女は,水平線に対する垂直線を模写することを除いて,垂直線と円の模写をした。Beeryの結果,3才2か月相当であった。Aは,震えたような線ではなく平らな線を書いた。自分の簡単なイニシャル”○”をかろうじて書ける。先の尖った,色付のフェルトペンを使うとより上手に書ける。

彼女は,小さなビーズをゆっくりではあるが正確に分類し,ゴム輪やペーパークリップを使ってカードや書類をファイリングできる。Macintoshコンピュータで,3〜6才のユーザーを対象とした教育的ゲームで上手に遊ぶことができる。彼女のキーボードには,1/4インチ大の適応シンボルが添付されていて,黒い印がついている。もっとも教師は,それがなくても彼女が十分に使えると考えている。

3. 粗大運動
Aは,大股で歩きうまく体をコントロールして移動し,長距離を歩いたり,たまにジョギングをする。指示されれば,大きな運動場用のボールを投げたり,ゆっくりトスされたボールを受けることができる。また,静止したボールを力強く的に向けて蹴ることができる。彼女は,2秒間片足立ちできる。筋力や忍耐力を強化する運動プログラムに参加していて,ユニバーサルマシンで重量上げをし,階段登り機を連続2分間行い,立ったり座ったりの動作を7回できる。

4. 自助行為
Aは,自分で上着をつけたり,背中用ザック,腰用ザック,小袋を扱うことができる。それらを持つことを楽しみながら,自信を持って取り扱えることができる。上着や腰用のザックを学校に忘れることや小袋を失ってしまうことがあるので,時々それらの物を忘れないようにするための催促が必要となる。

彼女は一人で食事と片付けができるが,朝食および昼食の後,口のまわりを清潔にする援助が必要です。Aは,着衣や着替えは一人でできますが,水着の場合のみ困難です。彼女は,Velcroのウォーキングシューズを一人で正しく装着できます。Aは,時々トイレのドアを開け放しで出ていくことを除けば,排泄と手洗いは自立しています。

5. 社会的/個人的
Aは,スタッフや生徒との関係では,楽しく過ごすことができる。何かを要求したり援助を求めたりしなければ,自分で何とかしようと徘徊する。目的の人を探し,そのことを適切な言葉で表現できる。Aは,自分ができる活動,特に興味の強いゲームでは,どんな生徒とでも一緒にゲームができ,皆とうまくやっていける。彼女は,2年前に比べ攻撃的な感情の爆発が少なくなり,自己を制御できるようになっている。元気なときは愉快な生徒である。

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IEPはどうなっているか その9 Santa Clara市学校区の教育心理的サービスに関する報告書 その1

カリフォルニア州のシリコンバレーにSanta Clara市学校区がある。学校数は24校。生徒数は15,300人。ヒスパニック生徒の割合は36%、高校卒業率は83%である。近くにはクーパーチーノ(Cupertino)、サニーベール(Sunnyvale)などの街がある。郡庁所在地はサンノゼ(San Jose)である。以前、この学校区の特別支援教育とIEPの内容を調査したことがある。その一部を報告したい。

この学校区には次のような専門家が常駐している。
・特別支援教育支援スタッフ
・プログラムスペシャリスト
・矯正体育スペシャリスト
・学校心理士
・言語治療士
・特別支援教育カウンセラ
・作業療法士
・行動分析士
・アシスティブテクノロジ判定者
・代替補助コミュに二ヶーションテクノロジスト
・ソーシャルワーカ

以下に紹介するのは、IEPの対象となった一人の高校生が法の定めによって3年毎に受けた検査結果である。各分野の専門性を有する職員による検査によって、詳しい発達状態が報告されている。それに基づき継続的な計画が作られ、それにそって指導の成果がどのように現れるかを伺い知ることができる。

学校に常駐する専門家は、学校心理士、言語治療士、矯正体育スペシャリストなどがいることも参考になる。この学校にはソーシャルワーカもいるが、この生徒には関わっていない。
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■生徒氏名: A. B.
生年月日: 1978年11月21日
歴年令: 17才
学校: Santa Clara高校
プログラム: ノンカテゴリカル (障がい別によらない)
教師: A. S.
報告日: 1995年11月27日
チームメンバー:    教師
学校心理士
言語治療士
矯正体育スペシャリスト

【問題に関する背景情報】
Aは現在Santa Clara高校でノンカテゴリカル・プログラムを受けていて,1週間に1回の割合で言語療法士と矯正体育スペシャリストから計画的な指導サービスを受けている。Santa Clara高校へ進学する前は,Busher中学校でノンカテゴリカルプログラムを受けていた。Aは,発達遅滞,てんかん性異常波,性染色体異常という診断を受けている。彼女の健康は良好で,学習活動における「聞え」と「見え」は良好と思われる。彼女は,母親とSanta Clara市内に住んでいる。

○実施されたテスト
実施者
Vineland適応行動尺度学級版: 学校心理士
Beery視知覚運動統合発達テスト: 学校心理士
Leiter国際動作性尺度: 学校心理士
保護者の面接,教師の観察: 保護者、教師
コミュニケーション発達テスト(SICD): 教師、学校心理士
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●Vineland適応行動尺度による評価:
コミュニケーション年令:4才4か月
聞き取り年令:3才11か月
表出年令:4才
書字年令:5才
日常生活スキル年令:4才6か月
パーソナル年令:4才6か月
家事対処年令:4才5か月
地域社会年令:4才5か月
社会性年令:4才9か月
対人交渉年令:5才3か月
遊戯・余暇年令:3才10か月
課題対処年令:3才7か月
Leiter精神年令:5才10か月
IQ:42

【観察と現在の評価】
Aは,周囲の環境や人に対して非常に過敏である。彼女は,教室ではコンピュータでの課題を楽しんでいることや行動原理に基づいた強化の随伴性が構造化されたものには対しては,積極的に反応していることが観察されている。

この評定は,記録の再調査,観察,面接、及び直接検査を実施し作成された。14歳のときのVinelandテストの結果は以下であった。

前回の評価:1992年11月
歴年令:14才
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コミュニケーション年令:3才5か月
聞き取り年令:2才6か月
表出年令:2才8か月
書字年令:5才11か月
日常生活スキル年令:4才4か月
パーソナル年令:3才5か月
家事対処年令:3才9か月
地域社会年令:5才3か月
社会性年令:4才2か月
対人交渉年令:3才4か月
遊戯・余暇年令:6才1か月
課題対処年令:3才11か月
運動スキル年令:4才7か月
粗大運動:5才9か月
微細運動:4才0か月

一人の生徒の発達経過を調べるためには、経年的な検査や観察が大切である。そのためには、人も時間もかかるがそうした体制を学校は用意する必要がある。IEPの作成と実施にはこうした検査結果を基にすることが規定されている。興味ある点である。

【注】
○Leiter国際動作性尺度(Leiter International Performance Scale)は知能検査の一種で、2歳から18歳までの知的発達を測定できる。認知、視覚、記憶、注意の4つの下位検査項目からなる。

○Vineland適応行動尺度(Vineland Adaptive Behavior Scales)は日本語版もあり、標準化されている。アメリカではよく使われている。

○Beery視知覚運動統合発達テスト(Beery Developmental Test of Visual-Motor Integration)は理学療法士や作業療法士がしばしば使うものである。

○コミュニケーション発達テスト(Sequenced Inventory of Communication Development)

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IEPはどうなっているか その8 プリンスウイリアム郡学校区でのIEP作成の過程(2)

本稿は、ヴァージニア州にプリンスウイリアム郡学校区におけるIEP作成の過程のその2である。この学校区は、首都ワシントンD.C.から車で2時間のところにある大きな学校区で、生徒の人種も多様な構成となっている。特別支援教育を受けるのは全生徒の11.3%となっている。これは全米平均より少し多いレベルである。

前回は、以下の3項目を記した。本稿はD以下である。
A. IEPカンファレンスを開始する前に(様式40-05)
B. 生徒の実態についての情報を整理すること(様式40-10)
C. 現在IEPを受ける有資格者であることを再確認すること
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D. 現在の学習能力レベルについてまとめる(様式40-20)
現在の学習能力レベルは、年度ごとの目標を設定するための基礎資料となる。報告書には、通常カリキュラムへの参加に関して生徒の障がいへの影響について詳述される。プリンスウイリアム郡において、通常カリキュラムには、学問的スキル、判断スキル、コミュニケーションスキル、テクノロジー、ソシアルスキルと行動スキルが含まれている。就学前の子どもに関しては、障がいが活動参加にどの程度影響を及ぼすのかについて報告書に記載される。

学習能力レベルの冒頭においては、学習環境の中の子どもについて記載される。長所は何であるのか。学習スタイルはどのようなスタイルであるのか。生徒は何ができるのか。子どもへの効果的なものは何か。子どもは社会的に自分自身をどのように捉えているのか。コミュニケーターとしては、学習者としては、などである。要するに、生徒の状態に合わせて支援者を提供する。

障がい児の中には、行動への介入、方略、支援を必要としている行動問題を持つ生徒もいる。もし、これらの行動問題が教育上不利になるとしたら、IEPカンファレンスによって考慮されるかもしれない。複数の資料情報から行動の問題は記録される。記録には、行動のチェックリスト、子どもの研究記録、教師の教育レポート、逸話の記録、保護者とのコンタクト日誌、訓練記録、などが含まれる。教育に関する現在のレベルは以下のことが含まれる。

1) 生徒の現在の行動の記録。
2) その行動の学習への影響。年度ごとの目標が改正されるとき、行動の目標は、生徒のために記録される。

E. 目標についてまとめる(様式40-25)
現在のIEPカンファレンスに先立って目標を準備し草稿することが進められる。IEPは、草稿が最終段階に入ったとき、保護者の受領とサインを必要としている。

指導領域:
IEPで話し合われる指導領域を決定するために最も最新の有資格者会議の要約を参照する。これらの領域は、「IEPカンファレンスで話し合われる指導領域」のページに記載されている。担当者は現在の学習能力レベルの各領域における生徒の機能を詳述する。例えば、ある生徒に関する現在の学習レベルでは、行動問題に取り組むための目標に対するニーズを示す。

年度目標:
年度目標とは、生徒が1年間に達成できるであろうと期待されることを記したものである。教育実践に関する現在のレベルの中に書かれた報告書と年度ごとの目標については直接リンクしなければならない。年度目標には、状況、行動、目標内容、評価基準の構成要素を含む。

・状況
目標段階においては、生徒が十全に能力を発揮できると考えられる環境について記述する。つまり、直接的指導、小グループによる指導、会話をする機会を提供すること、口頭によるプロンプトなどといったことである。
・行動
観察できる行動を明細に記述すること、そして測定可能な動作(書き、読み、計算、反応、理解への示し方など)について正確に記述する。
・目標内容
教え方、評価の際の主な問題への対応の仕方と何を学習するのかについて示されている。例えば、4年生程度の数学的概念、8歳段階の範囲、生徒の能力に匹敵したレベル範囲、適切な関わりについて。
・基準:
目標の測定基準を確立すること。例えば、80%、Cあるいはそれ以上の段階

1. 最新の報告書においては、指導の領域ごとに進捗報告が記載されるべきである。
2. どちらがそれぞれ関連したサービスとして適しているかどうか少なくとも最終目標と短期目標に関して検討すべきである。関係する専門家の人たちは、関連したサービス支援を提供するために協力しなければならない。そして生徒の教育プログラムの中に組み込まなければならない。

短期目標(IEP基準):
「IEP基準」「短期目標」という語は、互換して用いることができる。短期目標(IEP基準)は、状況、行動、目標内容の要素を含んでいる。短期目標は、生徒の現在の教育レベルと子どものために確立されている年度目標との間のステップである。基準は、年度目標に関する主な内容の分析を基にして進められる。そして目標達成への測定材料として非常に役立つ。

IEP目標は、日々のクラス目標とは違う。IEP目標は、年度ごとの目標を達成するために決定された一般的な基準である。クラス内における指導計画は、日、週、月をベイスとして行われるより一定の成果をねらいとして立てられる。そして一般的には、その詳細について述べることはIEPの中では要求されていない。つまり、目標を達成するための一定の方法、活動、教材について述べることは要求されていない。

(例)
・小グループによる指導を提供すること。生徒Samは、読みの前段階のスキルを身につけるだろう。
・口頭による読みを行うことによって、読解スキルを活用するようになるであろう。
・読みの課題を行うことによって、正確に質問に答えるようになるであろう。
・一つのストーリーを読むことによって、基礎的なできごとについて順を追って読むことができるようになるであろう。

評価:
・評価のためのスケジュール
評価スケジュールについてはIEP委員会によって決定され、そして目標を明確にするべきである。評価は、各セッションごと、週、9週間ごとに行うときに必要である。このスケジュールについては、保護者への報告を含んでいない。

・手続き
手続きは、目標達成を測定するために記録された書類によって行われる。一つ以上の手続きを活用してもよい。一つの手続きコードが、様式40-25の下に示されている。支援者は各目標に関して手続き欄を活用し、手続きについて書くこと。

・判断基準
判断基準とは、目標への達成を測定するために標準を確立したものである。例えば、80%達成、Cあるいはそれ以上の段階、10試行中8試行達成などである。

年度ごとの目標結果:
このセクションは、新しいIEPを記載するときまとめられる。このとき、生徒が年度目標に到達した目標について報告書を記載すること。

習熟度レポート:
年度目標に関する、習熟度レポートは、障がい児への保護者に提供されなければならない。同時に、通常学級の生徒にも提供されなければならない。IEP作成において進行状況を報告するためのスケジュールを作成するとき、生徒を参加させ学校でチェックする。

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IEPはどうなっているか その7 プリンスウイリアム郡学校区  IEP作成の過程(1)

ヴァージニア州にプリンスウイリアム郡学校区(Prince William County Public School)がある。生徒数は85,055人、学校数は93校である。生徒数では、ヴァージニア州で二番目に大きな学校区である。特別支援教育を受ける生徒の割合は11.3%、貧困世帯からの生徒は 35.2%となっている。生徒一人あたりの教育費は平均10,334ドル(110万円)となっている。国際バカロレア機構(International Baccalaureate)で認定を受けているのは全79学校のうち、3小学校、3中学校、2高校となっている。

この学校区でIEPの作成と実施状況を調査した。我が国でのIEPの現状を考えるのに大いに参考になるので紹介する。

障がいのある子どもたちと青年のために、無償で適切な公教育を保障することを目的とした主な文書が、個別指導計画:IEP(以下IEPと略す)である。プリンスウイリアム郡学校区ではIEPの作成にいたる詳細な手続きが決められ、それに沿った各種の様式がある。IEPカンファレンスを開始する前に教育委員会がしなければならないことがある。それを記述しているのは、「様式40-05」と呼ばれるものだ。保護者が出席する機会を保障するために、早い時期に電話やメール、その他の方法によって呼びかけることが規定されている。適正と考えられるサービス提供者とその他のスタッフメンバーを参加させること、そのために、保護者、スタッフへの連絡期間として3日から5日間が適当とされている。その手続きの一部を紹介する。

A. IEPカンファレンスを開始する前に(様式40-05)
1. 様式40-05を送付するとき、障がい児教育における保護者の権利についての複写を添付する。
2. もし、生徒が18歳あるいはそれ以上の年齢である場合、保護者が持っている全障がい児教育法でうたわれる
権利は生徒に移される。教育委員会のスタッフは、IEPプロセスにおける欠くことのできない部分として、保護者に参加してもらうことを念頭におく。
3. 移行目標をIEPに記載するとき、IEPカンファレンスに生徒を呼ばなければならない。
4. 以下に記されている人は、IEPカンファレンスに参加する必要がある。
・計画作りをまとめる人(管理者)
・障がい児教育担当教師
・生徒を担当している通常学級担任一人(もし通常学級に生徒が参加している場合)
・カリキュラムに精通している通常学級の教員一人(もしIEPが実施されている期間中にその生徒が普通教育へ参加する可能性がある場合)
5. 以下の人は、予告期間中にIEPカンファレンス に参加しなければならない。
・保護者
・生徒(もしIEP実施期間中に14歳あるいはそれ以上の年齢であれば)
・関係のあるサービス提供者
・移行サービスの規定の中に記されている代理人代表者
6. 基礎となる学校以外の学校に通学する場合、措置選択に関するカンファレンスを行う前に適当な障がい児教育スーパーバイザーがIEPカンファレンス に出席する場合、彼らは、IEP委員会の委員長を務めることになる。もしプリンスウイリアム郡内におけるパブリックデイプログラムへの措置が、一つの考慮事項となるのであれば、その手続きについては、注意事項の691,02-7に示されている。
7. プリンスウイリアム郡の学校以外で措置される場合、障がい児教育のスーパーバイザーは、カンファレンスに出席しなければならない。そしてIEP委員会の委員長として務めることもある。もしそのような措置がカンファレンスで持ち上がったならば、スーパーバイザーが出席するまでカンファレンスを延期する必要がある。

B. 生徒の実態についての情報を整理すること(様式40-10)
生徒:学校の記録用紙に生徒の氏名を記載すること。もし、その生徒が他の名前で認められているのであれば、それを挿入すること。
親学校:もし障がい児教育をおこなっていないのであれば、生徒が通学する学校について検討する
学年:IEPを適用する生徒の学年を示すこと。

C. 現在IEPを受ける有資格者であることを再確認すること
もし、1998年7月1日以前にIEPの効果を見直すのであれば、1997年〜1998年のIEPを見直し、目標ページに目標の進行状況を示さねばならない。

IEP目標の進行状況は、「手続き」欄に記載されているデータを使って「評価」欄にリストされている評価によって記録されなければならない。一般的には、結果は「80%達成」、「95%達成」、「目標まで習得していない」などという表現で記述される。「進歩している」、「現状維持」といった用語によって目標結果を示すことは許されない。

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IEPはどうなっているか その6 e-iepの機能

子どもの障がいの状態や程度は一人ひとり異なる。そのため特別支援教育の現場では複数の人によって観察されたり検査されたりして、子どもの発達課題を探ることになる。そのためにe-iepにはいろいろな機能を実装して子どものIEP作りを支援している。その特徴的な機能を以下に紹介する。

■チェックリスト
子どもの発達の実態を把握するための検査項目である。本チームが開発したチェックリストは小学生から中高校生の二種類がある。加えて文部科学省が作成した発達支援のチェック項目を標準装備している。項目別にグラフィカルに表示されるので観察結果は解りやすい。校内委員会や保護者への説明にも効果的である。

チェックリスト項目をカスタマイズすることができるので、学校毎のニーズに細かく対応することができるようになっている。設問に答えるだけで点数化されガイドラインと照らし合わせることで、支援の必要性をかなりの程度で客観的に確認することができる。

■願い〜目標
支援には一貫性が必要なことはもちろんである。そのためe-iepでは願い→長期目標→短期目標→手だてが連携する様に入力を促す機能がある。時に、この連携がブレる事がある。そのために、e-iepは願いから目標、そして手だてを連動させるようにしている。

■コミニュケーション
e-iepは複数の教師や専門家、そして保護者とで子どもを支援することを基本としている。そのために豊富な情報の共有機能やコミニュケーション支援機能で支援者と保護者をつなぐことができるように設計されている。

○連絡帳
保護者と支援者の会話がとても重要なことはいうまでもない。学校や家庭訪問で直接対話することはもちろんでだが、時や場所の制約を受けにくいメールによるコミュニケーションも活用できる。e-iepの連絡帳機能は保護者の携帯電話からe-iepに登録している担任や特別支援コーディネーターにメッセージを送る事ができる。担任が不在の時でも連絡が停滞しないようになっている。

連絡帳機能による通信は全てe-iepサーバー上に記録される。保護者の携帯電話に情報が残らない。携帯を万一の紛失時にも情報の漏洩はない。またe-iepサーバーは保護者の携帯電話の製造番号を自動的に記録、「ID」+「パスワード」+「製造番号」の三つで認証する。従って、他の携帯電話からアクセスをすることはできない。

○メモ
普段の子どものエピソードから打ち合わせの記録といった文字情報はもちろん、画像や動画も保存が可能である。一つひとつのメモにコメントを残せるので、教員同士の連絡や伝達にも活用が可能となっている。過去にあった事柄を記録することで、担任交代時の引き継ぎが容易になる。

○ケースカンファレンス(校内会議支援)
校内委員会、ケース会議といった特別支援に関する打ち合わせを支援する機能を有する。
・会議招集:メンバーに会議日時を伝え参加の可否を確認する。
・書類共有:会議資料の事前配布を行う事ができる。参加者が各自で用意することで無駄な印刷コストを削減できる。
・議事録:会議の結果を登録する。当日参加できなかったメンバーも情報を共有できる。

○合意
e-iepでは完成したIEPを「担任」、「支援に関わる教員」、「特別支援コーディネーター」、「管理職」の間で電子決済を行う。この行為により、「個別の指導計画」は学校として正式に承認されたものになる。e-iepではこれを「合意」と呼んでいる。一度承認されたIEPは支援者が勝手に変更することはできない。

■分析ツール
合意された計画は指導に移される。さらに指導されることによってどのような効果があったかを測る必要がある。e-iepは「応用行動分析」の手法を取り入れた分析ツールを標準で装備している。生徒の様子や設定した手だてを自動的に転記し、指導前と指導後の問題行動の回数を比較、効果の検証をすることができる。検証が終わった「手だて」は達成、未達成が判定されe-iepの情報が更新される。

このような指導計画を検証し分析する機能は、恐らくIEP作成ツールとしては世界最初の機能である。これまで調査したツールにはこのような分析機能は装備されていない。

■通知表機能
通知表機能では従来の学校毎の定型的な通知表フォームに加えて、指導計画、指導と分析結果などを総合して附表として自動的に転記さる。それを編集して出力され保護者に伝えることができるインターフェイス機能を有している。指導の成果を保護者に伝えることは支援者の責任であるので、この通知表機能はなくてはならないものである。

■引き継ぎ
子どもの学年進行によって、新しい計画を作る必要があるときは、前学期作成した個別の指導計画をひな形にして最小限の労力で計画を作ることができるようになっている。

「保護者参加の個別の指導計画づくり」というコンセプトはe-eipの随所にみられる。支援者の知恵を集め、それを蓄積することでより質の高い教育の実現することがe-eipの狙いである。

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IEPはどうなっているか その5 「e-iepと名付ける」

「総合的な校務円滑システムの構築による特別支援教育の情報化」という課題の主たる作業は、そのツールを設計し開発することだった。そのために、特にヴァージニア州(Virginia)やマサチューセッツ州(Massachusetts)、英国のバーミンガム市(Birmingham)に調査団を派遣し、市販の個別の指導計画作りシステムや学校区が独自に作成しているシステムを調べた。調査方法は、インタビュが中心で実際に運用しているシステムを観察する機会も得た。ヴァージニア州のフェアファックス学校区(Fairfax County Public Schools)ではシステム利用の教師研修にも参加しハンズオンを経験できた。

アメリカの学校は早くから校内に端末が敷かれ、それがサーバーに接続されて校務情報が共有化されている。大きな学校区は自分たちのシステムを管理し、小さな学校区は市販のシステムやサーバーを使い、学校区にそったいわゆるローカライズされたシステムを利用しているこが判明した。そこで本研究でのシステム名を「e-iep」と名付けた。

個別の指導計画(IEP)は、多くの情報を基にして関係者による共同作業である。時間のかかる作業である。おいそれと簡単に作られるものとは違う。通常、IEPは次のような手順を経て作られる。

1) 子どもの成育に関する資料、保護者を含めた関係者からの情報、診断結果などを収集する。
2) その時の発達状態を行動観察、面接、検査などで把握する。
3) 保護者の新しい期待や願いを聴取する。この願いは、行動のチェックリストなどで現れた生徒の落ち込んでいる領域や改善すべき行動などである。保護者とじっくり話し合う。ここでIEPが作成されることが決められる。
4) ケースカンファレンス(会議)などでの協議を踏まえて、指定された者が中心になって計画案を作る。長期や短期目標を明確に記述する。指導状の具体的な手だても記述する。さらに指導に関わる者を特定する。
5) それを保護者に説明し同意をとる。
6) コーディネーターなどのケース責任者や管理職から計画案の同意を受ける。
7) 計画に基づいて指導を展開し、授業毎、週毎、月毎、行事毎の特筆すべきことを記録し評価に生かす。
8) 指導の成果を計画の目標に照らしながら定期的に評価する。それを保護者に説明する。
9) 評価に基づき申し送り事項を明確にし次の指導に活かす。

IEPというものは、繰り返すが短時間で担任が一人で作れるものではない。複数の教師や特別支援教育コーディネーター、福祉関係者や保護者と緊密な連絡を取り合いながら作り上げるものだ。e-iepは、以上のような作業をする機能を備え、デジタル化できるようになっている。実態把握から保護者や教師の願い、達成可能な目標づくりやなど必要な項目が全て用意されているので論理的で解りやすい指導計画を作成できる。それだけに、システム上のIEP作成は、ケースカンファレンスと同様に操作手順に熟知していない難しい。

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