19世紀のフランスの哲学者、ポール・ジャネ(Paul Janet) が考えたものに「ジャネの法則」があります。ジャネは、エコール・デ・ボザール 国立高等美術学校(Ecole nationale superieure des Beaux-Arts)の倫理学の教授を努め、その後ソルボンヌ大学,今のパリ大学(Universite de Paris)で哲学の教授となります。
ジャネはいいます。「主観的に記憶される月日の長さは年少者にはより長く、年長者にはより短く評価される。」果たしてこれが法則といえるのかどうかは疑問ですが、「もう今年も終わりかぁー、最近はなんだか時間が進むのが早くなった気がする」という言葉はしばしば聞かれますから、年長者の時間感覚はこうしたものかもしれません。ジャネによると、長く生きれば生きるほど、今までの人生と比べて1年の長さが短くなっていくために、体感的に時間の進むスピードが早くなっていくのだそうです。
ジャネの法則の話を聞いて思うことがあります。これまで経験した事柄が多く、刺激が理論上は減るということです。だから体感時間が短くなるという帰結です。しかし、働いているときは、同じようなことの繰り返しが続き時間の経過に鈍感ではなかったかという思いがやってきます。
思うに、長く生きれば生きるほど好奇心が高まる経験を心掛けるべきでしょう。好奇心というのは生きる事の質的な向上のための大事な補正要素であることです。時間とか時というものは、質と量の二面があります。無為に過ごしがちになると時間の経過は早く感じられます。大人になり好奇心が無くなるとは、人生の意味という積分の値の上昇が停まることです。