ウィスコンシンで会った人々 その1 古いミシンのこと

短い旅をウィスコンシンで楽しんできた。いくつかのエピソードを紹介したい。

長女はマディソン(Madison)のダウンタウンで洋装店を母親から継いで経営している。彼女のパートナーは日系米国人で、葛飾は柴又の出身である。店はウィスコンシン大学と州議事堂との中間にあってState Streetという最も人気のある通りに面している。人通りが多くひっきりなしに客がやってきて、洋服の加工や修理を依頼していく。丁度卒業式のシーズンなので華やかなドレスやガウンの修繕で大童である。

店内には誠に時代物のようなミシンが三台ある。どれもBERNINAというスイス製のものだ。その一台は100年前のものだというが、今も立派に現役である。洋服の修繕だが、客は昔の洋服も大事に使うようで持ち込んでくる。「まさかこんなものが、、」というのもあるという。こうした客は、金持ちや立派な職業についている人だというのだ。古い洋服でも愛着が強いのだろうとこのパートナーは語る。貧乏人は安い者を買い、古くなればすぐ捨ててまた新しい安物を購入するのだと。

洋服の修繕業はアメリカでは廃業することはないだろうという。こうした古いが質の良いものを購入する人が多い限り、洋装店は立派に生業をたてられるという。日本では修繕業はなかなか大変だと云われる所以は、安いものを買い換えることが多いせいだろう。

同じことは家具についてもいえる。最近は安い家具を揃えた店があちこちで増えている。高価な家具はなかなか売れないようである。そんなこともあってか、新聞紙上で大手家具店の経営が話題になった。住宅の造りも変わり、クローゼットつきのマンションやアパートが多くなったので、家具の置き場がない。そのため高価な家具は売れないのだそうだ。結局合板の安く小さな家具を購入する。

衣と住の購入の変化が著しいのは、生活様式の変化と消費社会の流れによるものだろう。だが良いものは結局すたれることはない。

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