認知心理学の面白さ その三十七 発生的認識論とジャン・ピエジェ

ピアジェの発達理論は、人間の認知の発達についての研究結果です。人間の認識の発生を系統発生 (phylogenesis)と個体発生(ontogenesis)との両面から考察しています。系統発生とは、人間の認識は人間が科学的な知識を積み重ねてきたこと、個体発生とは個人の中でも積み重ねることによって発生してくると考えたのです。これは発生的認識論(genetic epistemology)と呼ばれます。

ピアジェは,人間の思考に関して質的に異なる4つの段階を設定しています。それを簡単に紹介しましょう。
1  感覚-運動期(sensorimotor stage)
この時期は生まれてから2歳くらいまでの発達過程です。生まれつき持った反射によって刺激に対して反応します。自分の身体部位を連続的に繰り返し動かしたり、ものを掴んで投げ、跳ね返ったりすることを繰り返し行います。周りの動きや五感を通して周りを知覚しますが、自己中心的な行動に終始します。

2  前操作期 (preoperational stage)
この時期は2歳から7歳くらいまでの発達過程といわれまです。話し言葉を覚える時期です。遊びは紙で皿をつくったり、箱で家を作ったりしながら、ものごとの象徴や順序を覚えていきます。「ごっこ遊び」がそうです。これは,思考が表象や象徴による心的イメージによって行われる現象です。ですがまだ抽象的な思考が不十分です。たとえば自分の家の犬と隣の犬は、「犬」という共通なものではなく別のものとしてとらえています。認知発達としてはいまだ論理や情報の操作ということは困難です。

3  具体的操作期 (concrete operational stage)
7~10歳頃を指します。この時期には,数の保存や系列化,たてゴリ化など簡単なある性質や共通点をもとに思考ができるようになります。ある性質をもつグループとまた別の性質をもつグループの共通項、つまりどちらのグループにもにも属するものを推理することができることです。論理と保存という概念を理解し、抽象的な思考の基礎ができる時期といえます。

4  抽象的操作期 (formal operational stage)
抽象的操作期とは,11~14歳の時期をいいます。この時期おいては,思考が現実の具体的な出来事の内容や時間的な流れにとらわれることがありません。そして,現実を可能性の中のひとつとして,位置づけて論理的に思考が行われます。内容に依存することなく,純粋に形式のみに従って論理的な思考が可能となるのです。それが、仮説演繹的思考とか組み合わせ思考、計量的な概念といった特徴です。