「東京帝国大学五十年史」によれば、1874年の東京開成学校の学科過程には心理学並びに修身学が記載されています。修身学とは哲学ではないかと推測されます。開成学校では、外国人教師、いわゆるお雇い外国人による外国語での講義が行われていました。その一人がエドワード・サイル(Edward Syle)です。彼は心理学も講義したという記録もあります。
開成学校教師のお雇い教師の名簿では、大部分が自然科学や英語の教師でありましたが、サイルは修身学を教えていたようであります。西洋の最先端の知識や技術が急速に日本に流入したのは、2,690人余りといわれるお雇い外国人教師によるものと考えられます。例えば、鉄道建設に功績のあったエドモンド・モレル (Edmund Morel)や建築家のジョシュア・コンドル(Josiah Conder)は有名です。
開成学校の教員に外山正一の名があります。彼は、1866年に勝海舟の推薦で中村正直らとともに幕府派遣留学生としてイギリスに渡りイギリスの最新の文化制度を学びます。江戸幕府の終焉により帰国後は、開成学校の教員として英語や心理学を教えたという記録もあります。それは上述した学科の一覧に、「心理学及び英語」として彼の名前が記載されているからです。外山正一は後に東京帝国大学文学部長や総長となった人物です。
外山の活躍は少々異色です。例えば日本語のローマ字化推進のため漢字や仮名の廃止を唱えます。西洋列強と伍するためには教育の向上が必要であり、そのためには女子教育の充実と公立図書館の整備を訴えたことなどです。1898年には第3次伊藤博文内閣の文部大臣などを務めたりします。