「アルファ碁」(AlphaGo) その十七 戦いか宥和か

碁で難しいのは、局地戦で相手とどのように折り合いをつけるかを見極めることです。自分の石が強いときは、相手を睥睨したり圧迫することです。逆の場合は一旦引き下がり守りにはいることです。

しかし、石の強弱がお互いに拮抗しているときです。そのときどのような戦術をとるかです。私の提案は宥和とか融和しないことと申し上げておきます。宥和とは相手に妥協したり譲歩することです。相手は本当はびくびくしているのに強がりを主張することがあります。それをこちらが見破れるかです。

翻って今の世界の政治状況をみてみましょう。日本と韓国、日本と中国、日本とアメリカ、日本とロシアの関係です。日本と韓国、中国は対等に渡り合っています。慰安婦問題、尖閣諸島問題、南シナ海の安全などで日本政府は妥協していません。こうした主張ができるのはアメリカの後ろ盾があるからです。現に次期トランプ政権の国務長官に指名されたレックス・ティラーソン(Rex Tillerson)は中国に対し、南シナ海の航行の安全や尖閣諸島問題は日米安保の対象となると警告しています。

日本とロシアの関係では、どうも日本政府は宥和政策に終始している感があります。そのため北方四島の帰属と平和条約締結は大分先送りされている印象があります。日本はトランプ政権の外交政策に期待しているようですが、アメリカとロシアはお互いに宥和しようとしています。従って北方四島の交渉は長引くだろうと予想されます。

宥和政策の失敗は、先の大戦直前のイギリス政府の政策に現れています。ミュンヘン会談 (Munich Conference)においてイギリス首相チェンバレン (Neville Chamberlain)は、ナチス・ドイツの領土拡張要求を小国の犠牲もやむをえないとして認め、イギリスの防衛を図ったのです。小国とはポーランド(Poland) やオーストリア(Austria)、チェコスロバキア(Ceskoslovakia)などの国々です。

碁では自分の石が強いときは決して宥和してはなりません。徹底抗戦に終始するのです。置き碁ではなおさらです。もし作戦が失敗したら白旗を上げましょう。