心に残る名曲 その三十九 「ドイツ人の歌」(Das Lied der Deutschen)

現在のドイツの国旗は黒・赤・金から成ります。ドイツの歌詞は、権威主義的な諸邦を倒して君主制下での自由主義的な統一ドイツをもたらそうとした1848年のドイツ三月革命のシンボルとなったといわれます。ドイツ帝国崩壊後のヴァイマル共和国(Weimarer Republik) 時代に正式に国歌として採用されます。1990年11月のドイツの統一後、歌詞の3番のみをドイツ連邦共和国の国歌とすることが確定しました。作曲したのはフランツ・ヨーゼフ・ハイドン(Franz Joseph Haydn)です。作詞者は、アウグスト・ファラースレーベン(August Heinrich Hoffmann von Fallersleben)で作ったのは1841年です。

この作詞には次のようなエピソードが伝えられています。反体制的な詩集を発行したということで、ファラースレーベンは教鞭をとっていた大学から追放されます。まだ英国領だった北海のヘルゴラント島(Heligoland)へ向かう船に、偶然フランスと英国の軍楽隊が同乗し、英国国歌『女王陛下万歳』(God Save the Queen)とフランス国歌『ラ・マルセイエーズ』(La Marseillaise)を演奏していたのです。当時ドイツという国はなく、「ドイツ連邦」というものがあるだけで、統一国家も国歌もなかったため、彼は大きなショックを受けたといわれます。

そこで、ファラースレーベンはヘルゴラント島でドイツ民族の統一を願ってこの歌詞を作詞し、その後ハンブルクの出版社フリードリヒ・カンペ(Friedlich Kampe)が初版を出します。題名は、「ドイツの歌」(Das Lied der Deutschen)と云います。

この歌詞の三番にはドイツ民族の統一に対しての展望が書かれています。歌詞の中にある「Einigkeit und Recht und Freiheit; 統一と正義と自由」は、ドイツ連邦共和国の標語となっています。統一とは団結、正義とは法と権利ということです。