認知心理学の面白さ その二 移民の歴史とレオン・フェスティンガー

心理学の専門家を調べると、多くの学者はヨーロッパからアメリカへの移民の背景があることがわかります。第二次大戦を前にして、ヨーロッパの政情や社会情勢が研究を妨げていたことがわかります。特にユダヤ系の人々はそうです。科学と同様に心理学や社会学者が新大陸に渡ります。

Clocktower Building University of Otago Dunedin New Zealand

社会心理学者の一人にレオン・フェスティンガー(Leon Festinger) がいます。両親はロシア系のユダヤ人でフェスティンガーはニューヨークで生まれます。アイオワ大学 (University of Iowa)でクルト・レビン(Kurt Lewin)の指導で学位をとり、「認知的不協和」(cognitive dissonance) という理論を発表します。

「認知的不協和」とは難しそうな用語ですが、かいつまんで解説してみます。私たちは日常のルーティンを繰り返しています。それが破られると居心地の悪さを感じます。習慣的な思考のパタンや信念も同じで、ある自分の強力な見解が、明白な反証に出くわすと心の中で耐え難いほどの一貫性の欠如が生まれます。この居心地の悪さを克服する道は、自分も反証を探し信念を貫くことです。

例を挙げれば、自分が新車を買ったとします。ところが友人が別な会社の車を買います。こちらのほうが燃費が少し良いという状況です。このとき心に一種の動揺が襲います。それを鎮めようと自分の車のほうが良いということの理由を探すのです。自分の車のほうが価格や維持費が安いという反証によって相手の優越に対抗しようとするのです。

認知的不協和は日常の中に様々な形で起こるものです。そうしたときの内的な葛藤は自己の信念や理性によって解決することが大事であることを教えてくれます。