【話の泉ー笑い】その十四 チャーリー・チャプリンと笑い

イギリスの映画俳優、映画監督、脚本家、映画プロデューサーがチャーリー・チャップリン(Charlie Chaplin)です。無声映画時代に名声を博したコメディアンでもあります。山高帽に大きなドタ靴、ちょび髭にステッキという浮浪者風の扮装のキャラクターで、踊り、歌、ものまね、パントマイムで単なる笑劇から風刺劇へと変化させます。喜劇は感傷的な人道主義にとどまりがちですが、資本主義に対する小市民の反抗の表現ともいわれます。「小さな放浪者(Little Tramp)」「街の灯(City Lights)」を通じて世界的な人気者になります。ドタバタにペーソス(Pathos)といわれる哀感や悲哀を組み合わせた作風が特徴的です。哀れな兵隊のペーソスと風刺を込めて描いた「担え銃(Shoulder Arms)」、脱獄囚が囚人服を脱ぎ捨てて牧師の服を教会で説教し、やがて再逮捕されるとメキシコへ追放されるとう風刺が加わった短編「偽牧師(The Pilgrim)」などもそうです。

作品の多くには自伝的要素も含まれています。「ライムライト(Limelight)」では、中年を過ぎてから酒を呑む日々を送っていた道化師のカルヴェロ(Calvero)と美しきバレリーナのテリー(Thereza Terry)との恋を描きます。社会的及び政治的テーマが取り入れられた作品に「モダン・タイムス(Modern Times)」にがあります。現代資本主義と近代的テクノロジーのもとでの人間疎外を告発し、後に〈赤〉という嫌疑を受けてアメリカから追放されるきっかけとなります。チャップリンは「モダン・タイムス」を「私たちの産業生活のある局面に対する風刺」として発表します。世界恐慌に耐えるトランプ(Tramp) とゴダード(Goddard)という女性を主人公としています。政治的言及と社会リアリズムを採用した映画であり、多くの注目を集めた作品となります。 今日、「モダン・タイムス」は、イギリス映画協会(British Film Institute) によってチャップリンの「偉大な長編」の1つと評価しています。

Charlie Chaplin

1940年代、チャップリンはさまざまな批判を受けながらも作品を製作し続け、アメリカでの人気にも大きな影響を与えていきます。その第一は、チャップリンが政治的信条を大胆に表明するようになったことです。1930年代の世界政治における軍国主義的なナショナリズムの高まりに深く懸念し、チャップリンはこの問題を作品で取り上げずにはおれないと考えていきます。次回は「偉大なる独裁者(The Great Dictator)」を取り上げます。