「アルファ碁」(AlphaGo) その十一 碁の心理とヤキモチ

碁でも「ヤキモチ」はしばしば登場します。相手の地が大きく見えたりしてついつい深入りするのです。土足で他人様の庭に侵入するようなものです。少しは遠慮がちに入ったらどうかと、観戦者はハラハラします。

この言葉で思い出すのは先の戦争で米軍がとった作戦です。日本軍は北はアッツ島から南はニューギニアまで大東亜共栄圏を拡大していました。米軍は輸送船を攻撃し兵站を絶ちながら防衛戦の弱いところからじわりじわりと攻略していきます。そして最後は沖縄に上陸します。深入りはせずじっくりと戦機を待っていたのです。

囲碁は戦争と同じく戦術の勝負です。あせることなくじっくり攻めては守るという繰り返しです。ところが、大模様の布石には必ず弱い所があるのです。腰が伸びた所といってもよいでしょう。こうした箇所からじわじわ攻められると必ずといってよいほど破綻して、大きく囲ったはずの箇所がぼろぼろになるのです。

「ヤキモチ」は相手の陣内に深入りすることです。応援が続かず七転八倒して逃げ回るか、大石が召し捕られることさえあります。囲碁の四文字熟語の一つに「入界宣緩」というがあります。これは相手が強い所「界」には「宣」しく「緩」かに入りなさいという意味だそうです。深入りを慎むべきなのです。「ここはあなたの地としても結構です。その代わり私はこちらの地をいただきます。」という気分で打つことが大切なのです。