「ころもへん」は衣服や布製品などを示す漢字が多い。衣装とか衣裳、袈裟はその典型である。「衣」には「裂」や「裁」のように下部に置かれるときはそのまま「衣」が使われる。「表」や「褒」などは漢字の下に同じく変形してつけられる。「初」や「袖」、「補」のように左の偏の位置に置かれるときも衣の変形が使われる。
敷き布団のことは「褥」。「褥そう」という熟語があるが、これは英語では”Pressure sore”。圧迫されて痛むこと、となる。英語のほうがわかりやすくてよい。
最近「褌」が男女に人気が出ていると報じられている。親父もつけていた。これは簡単でよい。衣服を脱ぐことは裸。筆者は「袴」を持っていない。袴をつけるという精神と経済面の余裕がなかったからだ。奈良の友人へ「一着いただきたい」と申し入れているが、背丈が違うといって断られている。
「襖」や「衾」もある。そういえば佐伯泰英の時代小説にはこの二つの漢字がしばしば使われる。「同衾」もそうだ。舞台は江戸。深川、浅草、吉原など下級武士や庶民の生活の場である。
片寄らないことは「衷」。心の中という意味もある。それが衷心である。折衷も納得できる熟語である。
我々はいつまでも若くはない。やがて衰え「喪」がやってきて次世代に役割を譲る。「禅譲」というと大袈裟だが、いつまでも先輩ぶらないで静かに舞台から退いていくのがいい。