旅のエピソード その8 「フライトアテンダントに声をかけては、」

どんな職業も楽なものはありません。職業を大まかに分けると主に体を動かすもの、頭を使うもの、その組み合わせのもの、というように分類されるかもしれません。国際線のフライトアテンダント(Flight Attendant)の仕事はどうでしょうか。毎回乗る人は異なりますが、仕事は主に食事の配布と片付けなどが中心です。満員のジャンボジェット内では、大変な重労働だと察します。あまり頭を使わなくてよい仕事かもしれませんが、疲れは相当でしょう。おまけに時差がつきまといます。体調の管理をどうしているのかが気になります。

アメリカでの学会発表に行くときです。機内で英語での発表資料を点検し、原稿を暗記しようとしていました。発表はできるだけ聴衆を見ながら、適度に身振り手振りで発表します。原稿の棒読みはいけません。発表の仕方は、「トーストマスター」(Toast Master)という大勢の人前で話すスキルを高めるクラブで学んだことがあります。何度も冷や汗をかきながら自分の発表の練習をしたものです。

座席で懸命に練習をしていると、女性のフライトアテンダントがやってきたので、「これから学会にいくのだ」と原稿を見せながら声をかけました。学会が開かれる町や学会の特色を説明し、たどたどしく学会発表の概要を話すと「頑張ってね」と声をかけてくれました。ややして彼女は白いフキンに包んだワインのボトルを持ってきて「グッドラック」と激励してくれ、そのワインをくれました。少々びっくりしましたが、なにか良い旅が待っているような心持ちになりました。

機内では、フライトアテンダントも乗客も退屈なので、なにかしら会話をしたいと思っています。機内でもちょっとしたことで、必ず一つや二つの楽しい思い出ができます。会話で避けたいことは、何度も「ビールを持ってきて欲しい」とか「コーヒーをお願いします」と頼まないことです。アテンダントに嫌がれます。なにか欲しい時は、自分でキャビンに行って頼むのです。