本稿は、「ウクライナの歴史から学ぶ」の最後の話題です。マイダン革命に対して、ロシアは猛反発し、ウクライナ領のクリミア半島のロシアによる併合と親ロ派武装勢力によるドンバス(Donbass)地方での不安と緊張が高まります。これがクリミア戦争の下敷きとなります。ドンバスは、ウクライナの東南部に位置する地方で石炭の産地です。2014年5月にポロシェンコ(Petro Poroshenko)が大統領に選ばれます。彼は人民の反乱を集結するために武力の行使を正当化します。ポロシェンコはEUへの加盟を模索しながら、国民の50%以上の賛成を獲得します。彼は東ウクライナでの市民の内戦を鎮めようとし、ロシア連邦との修復も計ろうとします。
ウクライナにおけるオレンジ革命やマイダン運動の余波で、2014年3月初旬からロシアを後ろ盾とする反政府の分離主義グループが、ウクライナのドネツィク州(Donetsk)とルハーンシク州(Luhansk)(ドンバス)で抗議行動を起こします。これらのデモ活動はロシアによるクリミアの併合を受けてのもので、ウクライナ南部と東部におよぶ広域な親露派の同時抗議の一環でありました。これが激化してドネツィク人民共和国(Donetsk People’s Republic)とルハンシク人民共和国(People’s Republic of Lugansk)を自称する分離主義勢力とウクライナ政府側との武力衝突に発展します。これがドンバス戦争(War in Donbass)です。当初の抗議行動は、主にウクライナ新政府に対する国内不満を表明するものでしたが、ロシアが親露派を利用してウクライナに対する組織的な政治活動および軍事行動を開始した事案とされています。
2019年に実施された大統領選挙では、ヨーロッパとの統合路線を訴える一方でロシアとの対話も重視する姿勢も示したウォロディミル・ゼレンスキー(Volodymyr Zelenskyy)が73%の得票率で対露強硬派として知られた現職大統領のポロシェンコを破り当選します。その後、停戦協定が結ばれては協定違反の武力衝突が繰り返されます。2021年秋にはロシアがウクライナ国境への軍の集結を開始し、ドネツィク人民共和国とルハンシク人民共和国を国家承認したうえで、2022年2月24日にロシアがウクライナへの侵略を開始し現在に至っています。