ユダヤ人と私  その34 ユダヤ人と笑い

「ヘブル(Hebrew)」の語源を調べると、「ユーラテス川(River Euphrates)の向こうからきた人々」、「一方の側に立つ人」とあります。もともと難民のような者でした。こうした国籍を持たない民族は国家の保護が求められなかったはずです。居住地を求め仕事を得ることは困難を極め、自らの才覚によって生きる術を探さなければなりません。「Hebrew」といわれた人々は、こうして知識と知恵を必要とし学ぶことを尊ぶ民族であることも暗示しています。いろいろな経験をし、いろいろな見方を編みだし生きてきた人々であったはずです。

知識と知恵の源はなんといってもこれはタルムード(Talmud)といえます。タルムードには宗教や法律、哲学や道徳など人生と生活のあらゆる事柄について書かれている、いわばユダヤの知恵の宝庫といわれます。全部で二十巻におよび、12,000ページに及びます。タルムードはラビたちの教えがつまっていて、様々な議論や解説も書かれているといわれます。ラビには権威があるのです。同時に、実は書かれている言葉よりも、その書かれているものをどう考えるかということで、けんけんがくがくと議論することこそがユダヤ人の優秀さの下地になっているともいわれます。

中でもユダヤ人で特徴的な事の一つが、笑い、ユーモア(humour)好きでジョーク好きであることです。明治大学の鈴木健氏によるとユーモアには3つの理論ともいえるものがあります。第一が「優越理論」で余裕を見せる笑いといわれます。他人を笑うのはもちろん、自分自身も笑うという余裕すらあるといわれます。他人を笑うのは易しことです。自分を笑うことによって向上しようとする気概も感じさせてくれるのですから不思議です。社会や制度、政治を笑いによって矯正する働きもあります。

第二は「解消理論」です。これには心的な緊張緩和を促す笑いがあります。ユーモアによって対話を盛り上げたり、その場の緊張と解くことができます。綾小路きみまろの毒舌漫談がそうです。中高年世代の悲哀をユーモラスに語ります。「笑う門には福来る」もそうです。

第三が「不調和理論」は驚きを生みだす笑いとえます。97歳の年寄りと医師との会話です。
医師 「長生きの秘訣はなんですか?」 
 年寄り「死なないことだな。」

 医師 「長生きの秘訣はなんですか?」 
 年寄り「タバコを吸わないこと。」
 医師 「いつタバコを止めたのですか?」
 年寄り「去年だったかな、、」

医師が期待する答えが裏切られ、驚きに中にユーモアを感じるのです。惚けた話で可笑味が伝わります。