心理学のややこしさ その二十六 「ウェーバー・フェヒナーの法則」

人間の感覚は正確でないことが多いです。暑さ、寒さの感覚は着るもので決まります。少し厳密にいえば寒暖計が必要となります。時間の感覚も時計という道具ではかるといった塩梅です。しかし、正確な道具を使うとしても人の感覚はどのように働くのかという疑問が浮かびます。

ドイツの生理・心理学者であるウェーバー (Ernst H. Weber)とその弟子 フェヒナー(Gustav T. Fechner)が人間の五感に関する面白い法則を提唱しています。「ウェーバー・フェヒナーの法則 (Weber–Fechner Law) 」です。

次のような実験をするとします。手に100gの重りが入った袋を持たせます。そこに1gずつ重りを加えるとしますと、人が重くなったと感じたのは110gになった時だそうです。続いて、200gの重りの袋に同じように1gずつ加えるとき、重くなったと感じたのは220gの時だということが分かりました。この20gのことを「弁別閾 (threshold)」といいます。「変わった」と知覚できる最小の変化の幅といえます。この実験の結論は、「人の感覚は等差ではなく等比になっているのではないか」というものです。

スポーツジムでウェイトトレーニングをやるとき、鉄亜鈴の重さを500gずつ増やすとしますと、ずっしりと重さをはっきり感じます。10gずつ増やすとすると恐らくは重さ増加を感じないはずです。トレーニングをするときに重さを徐々に増やしていけばよいようです。そうすると自然と訓練のつらさを感じず、しかも訓練の効果がでるようです。