クリスマス・アドベント その8 カンタータ第140番

カンタータ(Cantata)第140番は「コラール・カンタータ」(BWV140)と呼ばれる楽曲によっている。カンタータの基礎となっているのは合唱、コラール(Choral)である。教会暦によると、聖霊降臨の1週間後は三位一体節と呼ばれる。教会では、全ての日曜日礼拝には拝読される福音書の章句が決められている。三位一体節から数えて第27日曜日の福音書聖句が、マタイによる福音書(Gospel of Matthew)25章1節から13節となっている。この箇所では、花婿の到着を待つ花嫁の譬えを用いて、神の国の到来への備えを説く。それをふまえ真夜中に物見らの声に先導されたイエスの到着、待ちこがれる魂との喜ばしい婚姻へと至る情景を描いている。

カンタータ140番は「目覚めよと呼ぶ声あり」英語では”Wake, Arise,” ドイツ語では”Wachet auf, ruft uns die Stimme”として知られる名高い曲である。カンタータに配置される独唱はレシタティーヴォ(recitative)といわれる。レシタティーヴォは前回少し説明したが、概して大規模な組曲形式の作品の中に現れる歌唱様式である。叙唱、朗唱とも呼ばれる。楽器はホルンの他、木管と弦楽器、そしてチェンバロが使われる。

バッハは三位一体節後第27主日の礼拝に合わせてカンタータ140番を作曲したといわる。カンタータ140番は次の7曲から構成されている。

・第1曲 コラール  目覚めよと呼ぶ声あり
弦楽器とオーボエが付点リズムでもって演奏され、それに行進曲風の合唱が続く。晴れやかな喜びに満ちた曲である。
・第2曲 レチタティーヴォ 彼は来る、まことに来る
イエスの姿を伝えるテノールの語りかける場面となっている。
・第3曲 二重唱  いつ来ますや
わが救いの魂(ソプラノ)とイエス(バス)の間で交わされる愛の二重唱。
・第4曲 コラール  シオンは物見らの歌うの聞けり
テノールの歌うコラールは、ユニゾンの弦が晴れやかな落ち着きのある有名な曲である。物見の呼び声が夜のしじまを破って響く冒頭の合唱曲とシオンの娘の喜びを歌うテノールのこの曲は特に名高い。
・第5曲 レチタティーヴォ
さらばわがもとへ入れといって花嫁が登場する。
・第6曲 二重唱  わが愛するものはわが属となれり
再び魂とイエスとの二重唱となる。
・第7曲 コラール  グローリアの頌め歌、汝に上がれ
簡潔ながら力強い4声部によるコラールで終わる。

筆者がカンタータ140番を歌ったのはマディソンにいた頃のルーテル教会である。聖歌隊員はみな音感も良く声量があった。オルガンの音も会堂に響き心地よい時であった。バッハの音楽は世界の宝だと思えるのである。

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