お金の価値 その八 銀行の機能と「信用創造」

注目

 銀行は三つの機能を有するといわれます。ほとんどの人は預金のために銀行に口座を持っています。銀行は集めた預金を他に貸し出して経済を活性化しているのです。それによってわずかですが、預金者に利息を払うのです。銀行は、こうした預金業務を請け負う「金融仲介機能」を行っています。これが第一の機能です。

 次に銀行は口座からの自動引き落としによって公共料金やカード支払いを引き受けるサービス業務を請け負っています。これは為替業務といわれ「決済機能」です。私と同様にアメリカの大学で勉強していた子どもたちの学費のために、為替業務を通して送金していました。当然手数料が発生しましたが、実に便利な決済でした。

日本銀行

 銀行の三番目の機能は「信用創造」(credit creation)というものです。この機能は少々わかりにくいですが、流通している通貨の量を増やす働きがあります。これが「信用創造機能」です。もっといいますと、集められた預金を他の人や企業に対する貸し出し業務によって通貨が増える仕組みのことです。貸し出しは融資ともいわれます。銀行が貸し出しを繰り返すことによって、銀行全体として、最初に受け入れた預金額の何倍もの預金通貨をつくりだすことを「信用創造」といいます。

 「信用創造」のからくりは次のような例で説明できます。Aさんが民間銀行に100万円を預けます。次にこの銀行はBさんに90万円を貸し出すとします。Bさんはそのまま90万円を預けます。そうするとこの銀行にはAさんの預金100万円とBさんの90万円の預金残高があることになります。100万円のお金が190万円になっているのです。銀行は現金で貸し出すことはしません。その代わりにBさんに口座を作ってもらい、その口座に90万円と書き入れることでお金を貸し出すのです。これが「信用創造」の考え方です。

 「信用創造」は社会全体の通貨量を増やすことによって、経済活動を円滑にするという役割を持っているといわれます。別な見方をしますと、融資活動が活発な時は、通貨が増え、それによって経済活動も好調になるといえます。つまり、銀行から融資を受けた者はそれによって新規に工場を建て、商品の生産にまわしたりしながら供給活動を活発にすることができるのです。銀行が融資するだけで、預金は創造されるのでしょうか。政府が支出するだけで、日銀の準備預金は創造されるのでしょうか。答えはイエス、まるで錬金術や詐欺のようですが、「信用創造」とはこのような仕組みなのです。

信用創造

 もう一つの「信用創造」に関する説明です。銀行に100万円の預金があるとしましょう。ただ、銀行は100万円の紙幣を金庫に保管しているのはありません。銀行のコンピュータ上に100万円というデータがあるだけです。ですからキーボードをたたけば、いくらでも貨幣を造り出すことができるのです。世の中の通貨には現金と預金から成り立っています。ですがほとんどのお金は預金というデータです。私たちが5万円を紙幣で税務署で納税するとします。そのお金は政府預金に50,000とデータ入力して5万円が加わります。政府は5万円という紙幣を使って支出にあてるのではありません。データ入力した50,000の1万円札5枚は紙幣はシュレッダーにかけてよいのです。なお、政府預金とは、日銀に持つ当座預金のことです。

(投稿日時 2024年10月14日)  成田 滋