お金の価値 その十七 「貝」と通貨と漢字

 八王子市立大和田小学校の図書館で、毎週一回囲碁教室を開いています。子どもがやってくる前に図書の本棚に「お金のねうちは何できまる」という本を見つけました。日頃から家計の状況と政府の財政状況、つまり貸借対照表の見方を勉強しているうちに、「一体お金とか通貨とはなにか」という話題に興味が沸きました。そんなことで、たまたまこの本に目がとまった次第です。

 お金の歴史を3000年前の中国から考えてみます。日本でいえば縄文時代です。当時は米や布、塩がお金の代わりをしていました。計ったり、切ったりして量を自由に調節できました。つまりお金の働きをする物品貨幣でした。

 そして宝と同じ値打ちのある貝が登場します。宝貝というものです。宝貝はお金の役割をするようになり、この貝は安産のお守りとして重宝されてタカラ貝、「子安貝」と呼ばれました。この貝は大きさがほぼ一定なので、銅でこの貝の形をまねたり、後に金メッキを施して貨幣が作られていきます。

宝貝ー子安貝

 中国の戦国時代では、国ごとに異なっていた青銅貨幣に代わって紀元前221年頃に統一王朝である秦の始皇帝が制定した通貨が表れます。半両銭と呼ばれ中国最初の統一通貨といわれます。これは円形の青銅鋳造貨幣で、表面に「半両」の文字が刻まれています。一個の重さが半両、約8グラムで四角い穴がついています。これはロクロを使って銭の縁を削るには、四角い棒を通してずれないようにして回していたからです。

 日本では683年に中国の「開元通宝」をモデルとして「富本銭」が作られました。円形で四角い穴があり、そこに「富本」と刻印されます。 そして708年に「和同開珎」が作られます。当時、武蔵国に銅が発見され、大量の銅貨の鋳造ができるようになったので広まったといわれます。

和同開珎

 銅貨の歴史を簡単に説明しましたが、その後「貝」を部首とした以下のような漢字が沢山作られます。どれもお金とか商売とか貧富など、信用や経済、金融や財政などに関連していることがわかります。「貝」という通貨の原型が、今日まで日本語や社会などに偉大な影響をもたらしていることがわかります。

「貝」を部首として漢字の例:
購、買、貢、貴、資、財、負、債、貯、贈、貿、貸、賀、費、具、貨、貶、販、貫、貼、賄、賂、賤、賠、賛、賦、賜、賞、賢、贄、贔、頼、貞