なにか気になる その10  国立大学法人信州大学長の祝辞から

筆者はかつて、『自然に囲まれた緑豊かなキャンパスでの勉学と課外活動、都会の喧騒とは無縁の落ち着いた生活空間』にて10数年働いたことがある。兵庫県の社町というところだった。この『 』でくくったフレーズは、信州大学長が新入生に送った祝辞の枕で述べた一節である。

祝辞だが、やがて学長の話は訓辞調となる。「スマホの電源を切って、本を読もう。友達と話をしよう。そして、自分で考えることを習慣づけよう。知識を総動員し、ものごとを根本から考え、全力で行動することが、独創性豊かな信大生を育てる。」

学長のボルテージは上がる。「スマホ依存症は知性、個性、独創性にとって、毒以外の何者でもない。スマホの見慣れた世界にいると、脳の取り込み情報は低下し、時間が速く過ぎ去ってしまう。”スマホやめるか、それとも信大生辞めるか”」 このような内容の訓辞を学長がするとは新入生や在校生は思いもよらなかっただろう。

それほどスマホは大学生にも悪影響を与えているのだろうかである。スマホ依存症とはなにか。筆者の定義は、「本業以外の時間に一日6時間以上スマホを使う生活習慣病」としておこう。煙草でいえば一日二箱吸う状態である。「スマホを使うので新聞は時代遅れのもの、読まなくてすむ」と考える大学生もいるようだ。

ただ、時代遅れであっても、新聞や本や雑誌をきちんと読む習慣は必要だ。古代エジプトで使用された文字の筆記媒体、パピルス(papyrus)から今にいたるまで紙媒体の情報は綿綿と生きている。文字は手書きしないと記憶できないし書くことができない。これは保証する。

「スマホやめるか、それとも信大生やめるか」は一つの修辞であり決して訓示の趣旨ではない。スマホは日常生活に定着したが、使いようによっては、これほど問題性もはらむ機器もないようだ。その使い方を一度振り返る機会にしたかったのではないか。信州大学長もスマホのユーザーなら説得力があるのだが、、、。

Shinshu-U  信州大学Matsumoto-castle 松本城