ようやく日本語のシソーラスを紹介する番となりました。八王子市立図書館の書架にあるシソーラスとしては、2002年に講談社から出た「類語大辞典」と2003年に大修館書店からでた「日本語シソーラス類語検索辞典」ともう数冊があります。
「類語大辞典」は8万項目という分量を誇ります。多くの語を意味ないし概念にそって配列するのが普通ですが、このシソーラスでは逆に語彙の根幹となる比較的少数の語を細かく見ながら、その意味の繋がり具合を調べ、それにもとづいて分類の枠を考えていることです。分類の枠となるのは、和語でいう単純語ではなく、動詞や形容詞です。名詞に比べて動詞や形容詞は数が少なく分類しやすいこと、さらに名詞の多くが動詞や形容詞を元につくられていること、副詞は動詞を元にして作られるという事情もあります。動詞や形容詞といった用言は2,500語くらいといわれます。
このシソーラスは使い慣れないと混乱しがちになります。どの語句が自分が求める表現なのかが決めにくいのです。意外に収録する語彙の幅が狭いか、拡大解釈しすぎているきらいがあります。「思う」という語句では、「すでにわかっている事柄にあんとなく、また情緒的なはたらきかけをする」で良いのかという疑問です。「思う」は意志的な行為ではないでしょうか。
「日本語シソーラス 類語検索辞典」は1,044のカテゴリーに分かれ、延べ33万語の語句からなります。カテゴリーの中に意味の近さによって小語群が含まれます。関連語、対語、形容、表現語句、季語、枕詞、医学、聖書、仏教、古語などから成ります。ただし、分類の構成を優先せず、多くの言葉や表現を蒐集し、それを連想に基づいて練り上げられています。日本語使用の実態や、言葉の世界に定着した日本人の感性を反映していて「日本人の文化・感性の総索引」と呼ばれるような内容となっています。
本文が984頁ですが索引は581頁におよびます。索引を見るだけで語句の意味の広がりが実感できます。意味の同一性よりは連関関係を重視しています。
例えば、「良い人」と三拍子揃った人、あの人の人品は見事、というように言い換えることができます。「簡単と」いう語では、イージー、楽勝、分かりやすい、話が早い、初歩のように連想を収録しています。もう一例、「重要」では、肝要、大切、必要、主要、最有力、メイン、ただ事でない、必要欠くべからず、特筆に値する、一面トップ、鶴の一声、メッカといった按配で自分でどのように表現するかの選択が広がります。
「割り切れない思い」という語句をこのシソーラスは次のように説明しています。「釈然としない」、「判然としない」、「つかみ所がない、「とらえ所がない」、「腑に落ちない」、「辻褄があわない」、「前後に分かず」とい具合です。どの言葉を使ってもよいことになります。このように言い換えたい言葉を探すことができます。関連の深い言葉は隣り合って表示されているので、ぴったりした表現が見つかります。