アメリカの文化 その16 ベーグル

ベーグル(Bagel) は、小麦粉に水や食塩を加えて練った生地を発酵させ、細長くのばしリング状にしたものを茹でてから焼き上げるパンです。外側はカリッと焼き上げられ、内側はもっちりと詰まった歯触りになります。東欧系ユダヤ人であるアシュケナジム(Ashkenazim) のパンといわれます。

最初のベーグルはポーランドのクラクフ(Krakow) でユダヤ人コミュニティーから発祥したともいわれます。円形や製法は、もとはユダヤ人が中世の頃、南ドイツからポーランドに製法を持ち込んだプレッツェル(pretzels)から着想したようです。確かにベーグルはプレッツェルとそっくりです。ベーグルの定番の食べ方といえば、クリームチーズを塗るやつです。スモークサーモンやチーズ、トマト、タマネギなどをスライスしたベーグルにはさんで食べるときは涎がでます。

ニンニクや芥子の実、ゴマ、刻みタマネギやそれらを混ぜ合わせたものなどもあります。また、生地にシナモンとレーズンやリンゴ、ブルーベリー(blueberry)、クランベリー(cranberry)、ライ麦のプンパーニックル(pumpernickel)といったベーグルも美味しいです。

アメリカの文化 その2 「選ばれた民族」

アメリカの政治や経済に大きな影響を持つのがユダヤ系アメリカ人です。約600万人を数えます。ユダヤ人の生き様の歴史は紀元前に遡ることができます。時代を経て1800年代に起こったのが反ユダヤ主義(Antisemitism)です。ユダヤ教においては、ユダヤ民族が選民であると示します。ユダヤ人が神と特別な契約を結ぶ唯一の人々であり、その契約を守っていくことによって終末において救われるという考えです。この選民思想とは、旧約聖書の『出エジプト記』に登場する民族指導者モーセ(Moses)の戒律から生まれます。こうした教えにユダヤ人は従わなければならないことを指しています。自分たちの進むべき道が神より示されたのは、ユダヤ人に特別に与えられた恩寵であると解釈されています。この選民思想が後の迫害行為にもつながるといわれます。

東ヨーロッパやロシアで起こった迫害はポグロム(Pogrom)と呼ばれます。『屋根の上のヴァイオリン弾き』(Fiddler on the Roof)は、帝政ロシア領となった村に暮らすユダヤ教徒の生活を描いたものです。「牛乳屋テヴィエ」(Tevye)を原作としています。テヴィエ家族などユダヤ人に対して行なわれた集団的迫害行為が下敷きになっています。ちなみに「ポグロム」とはロシア語で「破滅させる、暴力たで破壊する」という意味です。

ユダヤ系アメリカ人は、大きく三種類に分けられます。 1900年代に中央ヨーロッパや東ヨーロッパから移民してきたユダヤ人は「アシュケナジム」(Ashkenazim)と呼ばれます。彼らの言語はイディッシュ語(Yiddish)として知られています。第二のユダヤ人は「セファルディム」(Sephardim)と呼ばれ、主に トルコや北アフリカ からやってきた人々です。セファルディムのユダヤ人は、スペイン語等を話していました。第三のユダヤ人は「ミズラヒム」(Mizrachim )と呼ばれ、イスラム教が多数派な中東のアラブ世界からアメリカにやってきたユダヤ人です。多くのユダヤ人コミュニティはその独自性を今なお保持しており、その宗教のみならず他のヨーロッパ系とは異なる文化を形成しています。

モーセの十戒は知られていますが、もう一つの律法による「口伝律法」があります。これは「タルムード」(Talmud)と呼ばれています。ヘブル語の原意は「学習」という意味です。タルムードの一つは「ハラハー」(Halakhah)と呼ばれ「歩き方」という意味ともなっています。古代から受け入れられてきた習慣や権威ある律法学者の判定が網羅されています。ユダヤ人の共同体成員の正しい「歩き方」を示しています。

英語あれこれ その14  ヘブル語とユダヤ人 その4 アシュケナズ

親しい知人で大先輩、Dr. Robert Jacob医師の家系はアシュケナズ(Ashkenaz)であることを伺っている。ご先祖はオーストリア、バルト三国、ボヘミア(Bohemia)、ポーランドなどの地域を転々としていたそうである。そして定住したのがポーランドであった。ポーランドはユダヤ人にとって非常に住みやすい地だったという。だが時代は変わる。

ポーランドのユダヤ人であるが、第二次世界大戦の前後に正統派ユダヤ教徒の多くが差別や迫害から逃れるために、イスラエルやアメリカ合衆国へ渡った。多くの科学者や芸術家、金融業者、思想家、学者や医者などが含まれる。Jacob家もその中にあった。イスラエル共和国は建国において「メシア信仰」から距離を置き、政教分離という近代国家の原則を採用した世俗国家とされる。こうした考えは、超正統派ユダヤ教徒から批判されてきた。

また他方で非正統派ユダヤ教徒のポーランド人やさらに世俗的なユダヤ系ポーランド人の多くはポーランドに残った。時代は下りポーランドの民主化運動は1980年代に盛んになる。そして1990年、大統領に選ばれたのが「連帯」をスローガンにしたレフ・ワレサ(Lech Walesa)である。

民主化以後ユダヤ系のポーランド人は、自分たちの先祖の出自を表に出すようになっている。こうした民主化運動はポーランド社会のユダヤ系への偏見を取り除くのにも大いなる貢献をしたといわれる。

民族主義を復興し国家を築くべきというシオニズム(Zionism)を調べているが、内容はなかなか難しい。さまざまな血が混じり、宗教観の違いも政治に複雑に絡みいっそう事を難しくしている。だがホロコストの経験から、イスラエルの「戦って生き抜く」という方針は変わらないようである。

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