アメリカの文化 その8  The Beltwayとメタファー

アメリカではいろいろな慣用句が使われます。その一つを紹介しましょう。首都ワシントンDCの周りにはインターステイト495(I495) と呼ばれる高速道路が走っています。495号の一部はインターステイト95と重なっています。首都の周りの環状線というわけです。首都には政府の沢山のオフィスや大使館、会社などが集中しているので、当然交通ラッシュが起こります。そのようなわけで、テレビなどでは「This morning, traffic is very heavy inside the Beltway」といった交通情報が流れます。

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アメリカの他の都市も「beltway」とか「beltline」という都市の外側を回る環状高速道路があります。「inside the Beltway」は通常ワシントンDCのみの高速道路を表すフレーズなのです。ですから頭文字が大文字の「Beltway」になります。この場合、「Beltway」は「首都ワシントンにおける政治」という意味でも使われます。「霞ヶ関」といえば中央官庁を指し、「永田町」といえば、国会や官邸の暗喩(メタファー: metaphor)として使われるのと似ています。

「White House」といえば大統領官邸とかそこで働く中枢のスタッフ、 「Pentagon」 といえば国防総省の建物です。五角形の多層リング上となっています。「10 Downing Street」はイギリスの首相官邸の代名詞。「221B Baker Street」はシャーロック・ホームズ (Sherlock Holmes)の住居のことです。ハリウッド(Hollywood)といえばアメリカ映画、「クレムリン」(Kremlin) といえばお分かりですね。このように、事象をより具体的にイメージできるものに置き換えて、相手の理解をくすぐるメタファーは修辞法(rhetoric)の一つです。

英語あれこれ その21 英文は直接話法で

この春、バルセロナを旅していたとき、兵教大の同窓生から英文要約を点検して欲しいというメールが入った。その要約を直して、同行していた長男の嫁Kateに見せると「受身形」に赤線が入った。直接話法にすることだ、というのである。

筆者の英語には特徴がある。その特徴は、日本人としての典型的なものといえそうだ。例えば、遠回しに表現したり、間接的にあることを伝えようとすることである。そのために間接話法というのを使う傾向がある。

間接話法の文章には説得力が欠けるというのである。「誰かかがそう言った、誰かがそのように考えている、研究結果がよく暗黙の了解がある」ということが間接話法で表現される。今時でいえば「KY」というのである。しかし文章を書くとき、KYは全くよくない。暗黙知といっても、間合いや言い表さない余白、舌足らずなどの部分を補ってくれるものが必要となる。文章では、舌足らずは舌足らずであり、相手に通じない。

日本人の思考の特徴は「ら旋型」と呼ばれる。その意味は、遠巻きに巡り巡りながら物事の核心へと向かっていくことだそうだ。当然、まわりくどくなったり同じことを繰り返すことにもなる。時間が未来となったり過去となったりする。単刀直入に核心を衝く表現は望まれないことがある。「趣がない」とか、「強すぎる」などといって好まれない。むしろ文章には、余韻や余白などの「遊び」が必要だといわれる。詩歌がそうだ。だが英語で文章を書くとき、特にペーパーを書くときはこの遊びは全く通用しない。

文章には簡潔さが大事である。そのために必要なスキルとは、理路整然とした文章を書くための修辞法を学ぶことである。修辞法とは、文節と文節、文と文をつなぐ接続の手法、比較対照の事例の使い方、文章のリズム、適切な語彙の使用といったことである。

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