ウィスコンシンで会った人々 その16 「東京圏の高齢者は地方へ移住を」

このようなかけ声は欧米諸国ではきいたことがない。それは何故かを考えている。合衆国の地方とか田舎の規模は日本の比ではない。人口200人という町もあちこちにある。こうした町の行政だが、近辺の町と一緒になって学校を運営し、ゴミを処理し、図書館を運営し、病院を経営している。それでいて独立した自治体なのは不思議だ。

日本は小さな国土なのだが、どうして過疎化とか人口減少が起こるのかである。それは地場産業を振興してこなかったことのツケが回っているからだ。農業や林業、酪農、漁業などに対する政策が貧困だったというしかない。ひたすら輸入に頼り地元で獲れる作物や魚に関心を向けてこなかったのだ。

民間有識者でつくる日本創成会議というのがある。座長は元総務相である増田寛也氏である。この会議が6月1日に「東京圏高齢化危機回避戦略」と題する提言をまとめた。この会議は、東京など1都3県で高齢化が進行し介護施設が2025年に13万人分不足するとの推計結果をまとめた。

この推計に基づく戦略では、施設や人材面で医療や介護の受け入れ機能が整っている全国41地域を高齢者の移住先の候補地として示していることである。大都市に住む高齢者が元気なうちに地方に移住することを促す専用施設がいろいろな県や市にあると指摘している。政府はこうした施設を市町村が整備することを資金、税制面で支援することを今後検討するのだとか。

東京への一極集中をもたらしたのは誰なのか。このような状況に至っては歯止めをかけるのは至難の業である。高齢者が持つ知識や技術を地方での仕事やボランティア活動に役立て、地方活性化に貢献してもらうというのだ。だが、高齢者は地方の活性化に役立ちたいなどとは考えない。快適な終の棲家を探しているのである。果たしてどのくらいの人が地方に移住するだろうか。その地方はどんな魅力があるのかである。

筆者なら次のような地方に住みたい。若い農家がいて新鮮な作物を作り子どもを育ている町や村である。そこにある学校は毎日ボランティアを歓迎する。そして自分もまだ役立つという実感を得ることができる町である。スポーツや文化活動も活発なのがいい。

次に病院や店舗や図書館がバスや車で30分くらいのところにある町だ。病気は避けることができないので、それくらいの距離ならなんとか通える。こうした施設はWiFiなどで繋がっていることも必須の条件だ。メディカルソーシャルワーカーが常駐していればもっとよい。このような投資なら行政はすぐできるだろう。人がいてインターネットがあれば快適な田舎暮らしができる。

001 2009-9-14-7

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