ユダヤ人と日本人 その25 スターリンによる大粛清 その4 スターリンとイスラエルの関係 

この原稿は「知られざるスターリン」という本に基づいている。作者はジョレス・メドヴェージェフ(Zhores Medvedev)、ロイ・メドヴェージェフ(Roy Medvedev)という兄弟である。本のはしがきによれば、前者は生化学者で歴史家であり、後者は歴史家、政治家である。二人ともソ連時代に民主化運動、反体制運動、人権擁護運動に関わったとある。特にロイ・メドヴェージェフはゴルバチョフ(Mikhail Gorbachev)やエリツィン(Boris Yeltsin)の顧問となった。

この本は五部から成るが、その中でもスターリンの死の謎、陰謀事件、後継者争い、原爆や水爆の開発、原子力収容所、スターリンと科学、スターリンと電撃戦、そしてスターリンとソ連のユダヤ人などが興味深い内容となっている。

ロイ・メドヴェージェフは次のように回想している。「歴史家にとって最も複雑になっていることは、スターリンがユダヤ人に対してとった政策とイスラエルに関してとった政策との間に際だった違いがあるということでである。」 1947年の国連総会で、スターリンが明確に親イスラエルの立場を表明する。それは同総会においてイスラエル国の樹立に賛成したことである。さらにイスラエルに対して戦闘機や大砲などを集中的に供与したのである。この援助がなければ1948年と1949年の二度にわたるアラブとの戦争に勝利しなかっただろうといわれる。

ところが、イスラエル独立後1949年1月の選挙の結果、親米政権がイスラエルに誕生する。イスラエルを衛星国にしようとしたソ連の目論みは完全に外れてしまうのである。スターリンの親イスラエル姿勢がなんであったにせよ、大多数のユダヤ人は、スターリンほど熱烈な反ユダヤ主義はいなく、その残酷さはヒットラーに次ぐと思われているのである。それが「医師団陰謀事件」であり、ユダヤ人反ファシスト委員会の弾圧である。
palestinian-loss-of-land-5f339  イスラエルの領土Egyptian Boy Standing near British Tank 中東戦争