ユダヤ人と私 その36 口をふさぐことを知らない人間

ユダヤ人は議論やディベートが好きな民族といわれます。一を語るのに十を言う癖があるといわれます。そのために饒舌を戒める諺が多いようです。討論は一種の芸術であるという人もいますが、饒舌には辟易するものです。

・人はしゃべることは生まれてすぐ覚えるが、黙することはなかなか覚えられない。

沈黙も言葉なのです。この言葉を学ぶと多くの語彙を増やすことができるといわれます。耳を傾けることによって学ぶことが多いということです。黙することは、喋ることよりも苦しいことです。黙することを教えられてこなかったからでしょう。

・口をふさぐことを知らない人間は戸が閉まらない家と変わらない。

口についての警句がユダヤ人の格言に多いのが目だちます。関連して思うのは、都議選中の防衛大臣の「防衛省、自衛隊、防衛大臣、自民党としてもお願いしたい」という放言です。公人意識が完全に不足しています。さらに選挙結果の後、安倍首相は次のように語っていました。

「今後、国政に関しては一時の停滞も許されない。内外に課題は山積している。反省すべき点はしっかりと反省しながら、謙虚に丁寧にしかし、やるべきことはしっかりと前に進めていかなければならない。」

このような殊勝な言葉を並べ、批判をかわそうとする姿勢は情けないことです。反省はいつも口先だけってことを多くの国民は嫌というほど知っています。なぜ敗北したのか、その分析を国民は知りたいのです。心から反省しないから、国政の課題に転嫁するのです。「戸が閉まらない家」というのは、心に隙があり、必ず誰かにかき回されるということです。

黙すること、口をふさぐことは、自分の立場をわきまえる人です。