家庭内暴力を受けた子どもの学校

日本では見かけない学校を紹介しましょう。アメリカ西海岸の学校です。それは、父親から暴力を振るわれた子どもが学ぶ学校です。日本でも家庭内暴力(DV)によって子どもが亡くなる悲しい出来事が報道され心が痛みました。アメリカでもこうした事例は多いのです。

西海岸オレゴン州のポートランドという町で教育関係の会議に招待されたときです。ポートランドは札幌の姉妹提携都市です。1900年代、このあたりには多くの日本人や中国人が入植し、厳しい人種差別を受けながら漁業や林業に従事したところです。

その会議の日程に地元の学校訪問が組まれていました。ある小さな学校に行きますと教室に案内されました。そこは家庭内暴力や虐待を受けた子どもが学ぶところでした。すでに子どもは帰ったあとでした。父親の暴力から母親と子どもを守るためにDVシェルターという特別の施設があるそうです。その場所は、父親にわからないような配慮がされているとのこと。子どもたちも特別な車で送迎されています。 今も家庭内暴力は白人、黒人の別なく起こっています。地域の人が暴力の疑いがあるという通報をすると警察が調べに入ります。そして子どもを安全のために避難させるのです。児童相談所の仕事ではありません。母親と共に安全に保護された子どもは、学校で学習を始めるのです。

こうした都市の学校は多様なニーズを有する子どもを教育しています。未婚の母親や銃器や麻薬所持で逮捕された高校生のための教室もあります。アリゾナ州のフェニックス市で同行していた教師達と出掛けたときです。教室に赴くと担当者は、保護観察となっている生徒と会話ができる粋な扱いをしてくれました。こんなことは閉鎖的な日本の学校ではあり得ないことです。