ユダヤ人と私 その41 悪意のこもったジョーク

強制収容所にいた監視者であるカポー(Kapo)や厨房係はユダヤ人の少数者でありました。収容所内では彼らは出世組といわれていたようです。彼らの振る舞いに対して、恨みや妬みに凝り固まっていた多数者である非収容者は、さまざまなガス抜きという心理的反応で応じていたといわれます。それは時に悪意のこもったジョークだったります。例えばこんなジョークが作られたといわれます。

二人の非収容者がおしゃべりをしていて、話題がある男に及びます。男はまさに出世組といわれるカポーでありました。一人が言うのです。

「俺はあの男を知っているぜ。あいつは市で一番大きな銀行の頭取だったんだ。なのにここではカポー風を吹かしやがっている。」

実のところカポーや厨房係は一見、出世組に見えたようですが、親衛隊は定期的に出世組を交代させ、新たな出世組に替えたといいます。収容所の秘密が漏れるのを防ぐために、それまでの出世組は消されていったということです。

女性のカポーもまた仲間から憎まれます。収容所内で親衛隊員に体を与えてまで生きようとします。こうして親衛隊に忠誠を尽くして衣食住の面で特権を与えられ、つかの間の待遇を楽しんだカポーもまた多くのユダヤ人と同じ運命を辿っていきます。よしんば行きながらえたとしても、過酷な仕打ち、たとえば髪を刈り上げられるとか、見せしめに合うといった行為が待っていました。

「ユダヤ人と私」のシリーズはこれで一応お終いとします。