留学の奨め その8 学長選び

アメリカの大学ではいろいろなことが話題となる。学長(President or Chancellor)の発言が報道されることが多い。フットボールコーチのほうが学長より年俸が高いとか、リーダーシップが強過ぎるといったことも取り上げられる。特に学長選びは新聞紙上を賑わせる。大学運営で最も大事なことだからだ。

学長を選ぶのは大学の理事会(Board of Regents)である。学内での学長選挙などない。どんなに高名な教授でも学長にはなれない。理事会は候補者をいろいろな基準をあてて、全米から探す。そしてねらいを付けた数名の候補者を大学に招いてヒアリングをやる。ヒアリングは公開される場合もある。ヒアリングの後はパーティまで開いて候補者と理事、参加者が懇談するというあっけらかんさもある。

学長は研究者から選ばれる。研究業績、政府とのパイプ、学会活動、研究費の獲得などが選考の基準となる。そして、大学運営にかかわってきた経歴も重視される。ノーベル賞受賞が学長に選ばれるなどとはきいたことがない。ほとんどの場合彼らは大学運営では全くの素人である。

かつて兵庫の小さな大学で働いていたとき、3年ごとの学長選挙を経験した。以前は、教授に投票権があってそれ以外の教員は傍観する有様であった。選挙が公示されると立候補者の推薦陣営が水面下で運動をやる。陣営の活動は、出身大学を出たものが仲間を誘い込むというものである。筆者は、こうした地元の大学出身ではない、いわば地盤も看板もないアウトサイダーのような存在であった。それゆえ、立候補者の陣営から盛んに電話がかかってきた。

そして投票日。立会人は候補者の側から選ばれる。彼等は投票行動をじっと見つめる。筆者のような「無党派層」は特に注目される。「成田」というのと「朝野」というのが学長に立候補しているとする。記名するときは、後者のほうが時間がかかる。立会人はそれを見て、「誰それは誰に票を投じた」とわかるそうだ。まるで田舎の町長や村長選挙のようである。実にくだらない話しだが、こんな学長選びが10数年前まで行われていた。蛸壺の中のような大学運営であった。今は、理事会が実質的に決める。欧米にならった学長選びだ。

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North Carolina State University Chancellor, Randy Woodson

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University of Wisconsin Chancellor, Rebecca Blank