心理学のややこしさ その三 「Logia」と「Psychologia」

今回は、横文字が多数登場するので我慢してください。資料を参照するとどうしても原本を引用しなければならないからです。

「Psychology」はラテン語(Latin)では「Psychologia」といわれます。「Psychologyを別な側面から理解するためには、 接尾辞である「logia」を考える必要があります。Wikipediaによりますと、「Psychologia」という語を最初に使ったのは、クロアチア(Croatia)の人文主義者、詩人でラテン語の研究者であったマルコ・マルリック(Marko Marulic)(1450-1524年)といわれます。その著書「人間理性心理学」(Psichiologia de ratione animae humanae)です。この論文自体は現存していないそうですが、この題名はマルリックと同じく詩人で友人であったボジチェヴィッチ・ナタリス (Bozicevic-Natalis) の『スプリトのマルコ・マルリッチの生涯』(Life of Marko Marulic from Split)に記されているとあります。

その後、1590年にマールブルク(Marburg)で「人間学的心理学」(Psychologia hoc est de hominis perfectione, anima, ortu)を発表したドイツの物理学者で数学者、論理学者であったルドルフ・ゲッケル(Rudolf Gockel)もPsychologiaを使います。

さて「Logia」という接尾語です。もともと古代ギリシャ語のLogia」とはユダヤ教やキリスト教で使われる託宣とか神託(oracles)ということです。聖なる言葉という意味でもあります。福音(gospel)という意味でも使われます。「Logia」はその後、科学とか人体に関する知識として使われるようになります。「Logia」から英語の「logy」が派生します。「logy」が使われるようになったのは1700年代といわれます。「神学」(theology)とか「社会学」(sociology)は14世紀には使われていたようです。

しかし心理学という術語が一般的となったのは、ドイツの観念論哲学者で数学者でもあったクリスティアン・ヴォルフ (Christian Wolff) が著わした「経験的心理学」(Psychologia empirica methodo scientifica pertractata, qua ea quae de anima humana indubia experientiae fide constant, continentur)(Empirical Psychology) (1732年)と「合理的心理学」(Psychologia rationalis methodo scientifica pertractata, qua ea, quae de anima humana indubia experientiae fide innotescunt (Rational Psychology (1734年)で用いてからとされます。

「経験的心理学」と「合理的心理学」という区別は、フランスの哲学者であるドゥニ・ディドロ(Denis Diderot)が「百科全書」で取り上げています。百科全書は「技術と科学に関する普遍的な百科全書」(Encyclopedie ou dictionnaire universel des arts et des sciences)といわれます。この全書は1751年から1772年まで20年以上かけて完成します。後に、幕末イギリスに派遣された西周がこの全書から大きな影響を受け、西洋の心理学を紹介することになります。このことは後日紹介することにします。