英国の精神医学者であるラター (Michael Rutter) は1972年頃に自閉症の発症率は10,000人に3〜4人 (.03%)だと主張しました。当時、自閉症は、虐待など母親の愛情が不足であったり、母親と分離したことが原因で発症するとされていました。
自閉症研究者として名が知られていたベッテルハイム (Bruno Bettelheim) が著書「自閉症・うつろな砦」(The Empty Fortress: Infantile Autism and the Birth of the Self) 等の著作で「冷蔵庫マザー説」 (refrigerator mother) を説き、養育者の態度などの後天的な理由で発症するということを強調します。ジョン・ボウルビィ (John Bowlby) という英国の精神科医も同様に「母性的養育の剥奪」(deprivation of maternal cares) といった愛着行動の不足が自閉症の根底にある課題だと主張します。こうした子供を取り巻く環境説が広く社会一般に信じられますが、やがて誤りであるとして否定されます。
おさらいですが、自閉症とは、1人遊びが多く、 特定の物に強いこだわりを示し、コミュニケーションのための言葉がでないといった状態です。関わろうとするとパニックになったりもします。前述したラターは、自閉症は兄弟間での出現率は.2%と発表し、遺伝ではないかという仮説をたてます。アメリカの発達心理学者、リムランド (Bernard Rimland) は自閉症は神経発達の不全により障害であると主張します。
リムランドは、アメリカ自閉症協会 (Autism Society of America)の設立に尽力します。この協会もアメリカ精神医学会 (APA) も自閉症は先天性の脳機能障害であるという立場にたっています。次回は「診断のインフレ」について考えます。
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