イスラエルの3/4はユダヤ人で、残りはイスラム教徒であるアラブのパレスチナ人で構成されています。イスラエルにおける宗教の影響は政治にもかかわっています。ユダヤ人にはアシュケナージ(Ashkenazi)とセファルディ(Sephardi)という二つの民族がいることは既述しました。両者は長い伝統と文化を継承し、そこから政治、経済、社会についての異なる主義や思想を持っています。
一般に、イスラエルではアシュケナージが富裕層であり既存体制の支持者層であるのに対し、セファルディは世俗的で社会の改革を支持する層であり低所得者層を占めているといわれます。この二つの支持層では当然対立が起こり、現在のイスラエルの政界でも起こっています。宗教的に原理主義の立場をとる派と世俗的な考えを政治や日常生活に反映しようとする派との対立です。イスラエルにおける内政上の対立は、この「世俗と宗教の相克」ということにあります。宗教的な価値に基づいた政治体制を要求する勢力が挑戦し、その影響力を拡大しているという現在の政治勢力の姿は、イスラエルとパレスチナ双方に共通して見ることができます。
イスラエル政治の最大の特徴は、単独与党が存在した経験がなく、建国以来常に連立政権であるということです。イスラエルの現政権の基盤はリクード(Likud)という政党です。党首はネタニヤフ(Benjamin Netanyahu)で、労働党と並ぶ二大政党として2005年から政権を担当しています。この政党は領土拡張を強硬的に主張する保守派です。ガザ地区でのイスラムの原理主義で過激派ハマス(Hamas)の台頭に対して敵愾心を強めています。
リクードはイギリスがパレスチナの範囲をヨルダン川西岸に限定したことに反発し、「大イスラエル」を実現させること主張しています。パレスチナ被占領地–ヨルダン川西岸における入植地拡大、対イラン制裁などを党の方針としています。