心に残る名曲 その四十六 ヨハネス・ブラームス(Johannes Brahms) その二  民謡的色彩

ブラームスの声楽曲はもとより、器楽曲の多くの主題やモチーフの中に民謡的な性格が見いだされると指摘されています。例えばヴァイオリンソナタ第一番ト長調と第二番イ長調に、自作の「雨の歌」、「歌の調べのように」が転用されています。管弦楽曲や室内楽曲が複雑で精緻な構造を持っているにも関わらず、きわめて自然で親しみやすいのは、このような主題やモチーフの有する民謡的、歌曲風な性格に由来しています。

AUSTRIA – JUNE 23: Johannes Brahms (1833-1897) and his wife, Adele Strauss (1856-1930) eating breakfast in Bad Ischl, Austria. Vienna, Haydn-Museum (Photo by DeAgostini/Getty Images)

ブラームスの作品の特徴ですが、劇音楽や交響詩が少ないこと、器楽曲と声楽曲が同じ程度なのですが器楽曲では室内楽が圧倒的に多いことです。管弦楽曲でも伝統的な形式を重んじ、重厚で壮大かつ精緻な印象を受けます。

ブラームスの民謡との関わりです。フランス革命とナポレオン(Napoleon Bonaparte)の出現による各国での民族意識の高揚と自国の文化遺産の再発見がその理由といえそうです。ナポレオンの勢力はイギリス・スウェーデンを除くヨーロッパ全土を制圧します。イタリア・ドイツ西南部諸国・ポーランドはフランス帝国の属国に、そしてドイツ系の残る二大国、オーストリア・プロイセンも従属的な同盟国となります。独裁や圧政から独立を獲得するためには、こうした民族意識は欠かせない要因です。