文化を考える その15 それぞれの家族史 その7 ガンと次女

次女の恵美はウィスコンシン大学で生物学を学び、卒業後首都ワシントンDCにあるジョージ・ワシントン大学(George Washington University)の大学院で公衆衛生学のMAをもらっている。そして今は、ウィスコンシン大学の看護学部(School of Nursing)でターミナルケアの看護師を目指しているところである。母親のターミナルケアに就いて、訪問看護師からいろいろな処置方法を学ぶうちに、自らも看護師を目指すようになったようだ。

乳ガンの手術を受けてから幾度となく小さなガンが発生し、その都度抗ガン剤の投与を続けて30年が経った。だが、ガン細胞の根絶にはいたらなかった。今、ガン研究の最前線は、胚性幹細胞というガン細胞を作る源を死滅させる薬の研究である。この胚性幹細胞は、Wikipediaによると自らと全く同じ細胞を作り出す自己複製能と、多種類の細胞に分化しうる多分化能というまことにやっかいな性質がある。現在の抗ガン剤は胚性幹細胞を根絶することができない。世界中の研究者がこの開発にしのぎを削っている。誰が最初に開発するかは問題ではない。人類の幸せに誰が最初に貢献するかである。

沖縄の生活に時間を戻す。1981年頃、教会がつくった幼稚園で恒例の健康診断が行われた。その結果、次女の血液型がRh- であることが判明した。少々驚いたのは、やがて彼女が結婚したとき、相手がRh+の不適合妊娠でも初回なら胎児への影響はないが、2回目以降の妊娠で母児血液型の不適合が起こりえる可能性があることであった。

大きくなって次女にはRh- のことを告げた。やがて彼女高校や大学で血液型については学んだようで、今の旦那と結婚し二人の娘を育ている。旦那もRh-だから孫娘のRh-である。老婆心ながら、怪我の場合の輸血などを考慮すると、小さいときから血液型は教えておくようにと伝えている。次女の飽くなき学びの意欲には、母親の30年間のガンとの闘いという後押しがあるからだと思っている。

madison2 University of Wisconsin, MadisontmpGeorge Washington University